光を辿る家

グローバルベイスのオーダーリノベーションサービス「マイリノ」でリノベーションされた麻布十番の中古マンションにお住まいだったY様。コロナ禍をきっかけに、大岡山にある3階建の戸建住宅にお住み替えされ、今回も「マイリノ」にリノベーションをご依頼いただきました。

「住み替えのきっかけは、新型コロナウイルスでした。以前は麻布十番のど真ん中に住んでいましたが、新型コロナウイルスの影響でほとんどのお店が閉まってしまい、在宅勤務も増えたため、都心部に住む必要はないのではないかと考えました。マンション住まいが続いていて、次は戸建に住んでみたい気持ちもあり、階段のある生活はマンションとはまた違ったリノベーションができるのではと思い物件探しを始めたところ、この物件を見つけました。前回のリノベーションでイメージ通りにつくっていただいたので、今回もグローバルベイスにお願いしました。」（Y様）

物件探しの期間は、約3～4カ月。以前お住まいだった麻布十番のマンションが思った以上に早く売却できたため、早急に物件を見つける必要がありました。もし希望の物件が見つからなければ、いったん賃貸に引っ越すことも考えられたそうですが、引っ越しの手間を考えて、できればすぐに購入したかったそうです。

「都心部へのアクセスが良く、通勤が苦にならないエリアで探しました。コンクリートの見た目が好きでインダストリアルな内装にしたかったので、鉄筋コンクリート造はマストでした。この家は大岡山や自由が丘にも歩いていける距離で、駅までの道のりに綺麗な桜並木もあり、住みやすそうで楽しい雰囲気が気に入り購入を決めました。」（Y様）

3階 リビング
「リノベーションのテーマは、ヨーロッパの雰囲気を取り入れた海外風です。モダンとインダストリアルをベースに、ところどころに色を取り入れてカラフルにしています。自分たちの好きな要素を散りばめつつ、統一感のある空間を目指しました。」（Y様）

1階に玄関と浴室、2階に主寝室とゲストルーム、3階にリビングダイニングキッチンがあり、1階と2階は落ち着いた雰囲気、3階へ上がると広く明るいリビングダイニングが広がっています。

「暗いところから明るいところへ引き寄せられる人間の心理を利用して、1階と2階を意図的に暗くし、人が集まる3階のリビングを明るく開放的な雰囲気にしました。光を求めて人が自然と3階へ上がってくる動線になっています。」（Y様）

前回のリノベーションと同様、「図面を見て想像するだけではわからない部分も多いので、実際に住んでみて生活動線を確かめてから間取りを描きたい」というお考えがあったY様。今回もすぐにすべてのリノベーションに取り掛かるのではなく、まずは2階の寝室部分からリノベーションをスタートしました。

「2階をリノベーションしているあいだは、3階のリビングを寝床にしていました。2階が終わったら寝床をうつし、次に3階→1階の順で進めていきました。住みながら工事を進めるので、居住スペースにホコリが舞ったり資材が置かれたりすることは承知の上でお願いしましたが、これも苦労話のひとつです。」（Y様）

1階 廊下を進み左にある収納スペース
リノベーション前の玄関は、入って右側にシューズボックスが設置され、土間とホールの境目には上がり框がありました。同居するＡ様と話し合い、上がり框を取り払って土間とホールの境目をフラットにしました。

「1階の玄関スペースは、土足でもスリッパでも歩けるミニラウンジのような雰囲気を目指しました。日本人としては、土足で屋内を歩き回るのは抵抗があるかもしれません。私自身も上がり框をなくすという発想はなく、玄関を入ったら靴を脱いでスリッパを履くものだという先入観がありました。でも、上がり框を取り払ったことで可能性が広がり、今のような開放感のある雰囲気にできたと思っています。ロボット掃除機で1日1回掃除をすることで、汚れは気になりません。玄関から光を辿って奥へ進むと、靴やバッグ、コートを収納できるスペースに繋がります。お客様が来たときは、荷物をすべてその収納スペースに入れてもらい、手ぶらで3階のリビングまで来られるように設計しています。」（Y様）


1階 浴室・岩盤浴スペース
1階の玄関からまっすぐ進むと、大きな浴室エリアがあります。リノベーション前は、広い洗い場にシャワーと一般的なサイズの浴槽があるのみの空間でしたが、リノベーションによってプライベートスパのような空間が完成しました。

「リノベーション前は浴槽に対して洗い場がとても広く、もったいないと感じる空間だったので、大きな浴槽をつくることにしました。浴槽に使用しているボタニカル柄のタイルは、タイル屋さんで見つけて一目惚れしたものです。岩盤浴スペースはショールームで黒い石材を見ているときに、『岩盤浴スペースをつくろう』とひらめきました。最初からしっかりとプランを決めるのではなく、『自分が使いたいものと出会ったときに、それとマッチした雰囲気をどう作るか』を考えて、逆算してプラン作ることもありました。」（Y様）


2階 廊下
2階には、主寝室と書斎、ゲストルームがあります。各部屋の扉の色を、プライベートスペースは黒、パブリックスペースは白で分けています。光に沿って3階へ行ってもらえるよう、廊下の天井照明は一直線に設置しています。より落ち着いた空間にするため、廊下に黒いカーペットを敷くことを考えているそうです。


2階 主寝室
2階の主寝室は、3つの窓の両側の幅が均等になるようクローゼットの奥行を調整し、両側にあるクローゼットの天井部分を低くしています。

「基本的に天井を低くすることはしたくなかったのですが、両側のクローゼット部分は天井高を下げてクローゼットが埋め込まれているように見せた方が綺麗だと思いました。少し遊び要素を入れたかったので、壁紙は柄のあるタイプを採用しました。美術館で使われている手法を参考に、壁に掛けているアートを照らすようにダウンライトを設置しています。」（Y様）


3階 リビングダイニング
3階へ上がると、開放的なリビングダイニングキッチンが広がっています。リノベーション前は洗濯機置き場があった位置にパントリーを設置し、生活動線を考えて洗濯機置き場は2階に新設しました。

「お風呂場のある１階で服を脱いで、３階に洗濯物を持っていき３階で洗って干すという動線だったので、引っ越した当初は洗濯物を持って1階と3階を行き来していて、マンション以上に生活動線の重要さを感じました。今は洗濯機置き場を２階のパウダールームの隣に配置し、2階のバルコニーで干しています。」（Y様）


3階 リビング
リノベーション前のリビング壁面には、2つの外開き窓が並んでいましたが、３枚の大きなスライド窓に変更し、明るく開放的な空間に生まれ変わりました。スライド窓の外側には、リモコンで角度の調節や上下に開け閉めができるルーバーシャッターを取り付けています。

「3階の壁は、統一感が出るように色と素材にこだわりました。ソファを置いているリビング側はダークグレー、キッチン側はブルーの壁紙です。ソファがあるリビング側の壁紙をダークグレーにした理由は、窓の枠が一番上まであるかのような錯視を生み出すためです。夜になると、窓枠が天井まであるような雰囲気になります。カップボード側の壁は、対になっている階段側の壁のコンクリートに合うよう、石のようなブルーグレーのタイルを採用しました。」（Y様）


3階 キッチン
「リノベーション前は壁付けのL字型キッチンがあり、壁面には吊戸棚が備え付けられていました。今はキッチンに小窓が3つありますが、リノベーション前は吊戸棚で窓が1つ隠れていて、暗くて窮屈に感じる空間でした。上部の収納は使いづらいので、収納は全て下に設けています。キッチンの天板には上質感のある薄いステンレスを採用し、天板が浮いて見えるようなデザインにしたかったので、天板の下に2cmの黒い板を挟み、向かいのカウンター側にも座りやすいよう設計しています。この家に引っ越してから、家にいる時間が増え、ほぼ毎日料理をするようになりました。周辺には商店街やスーパー、八百屋などがあるので、散歩をしながら食材の買い物をするのも楽しいです。家に友人を呼ぶことも増えました。」（Y様）


3階 キッチン
キッチンはアメリカのワークステーションのような、複数の人が同時に作業できる大きなサイズで、蛇口も２つ設けています。シンク部分の板は上下に取り付けたり外したりすることができ、スライドさせて水切りやまな板の位置を自由自在に動かしながら作業が可能です。


3階 キッチン
カップボードの引き出しは、食洗機を開けたまま食器類の片付けができるよう、最大限引き出したときの奥行きを短く調整しています。


3階 カップボード
カップボードの一部へこんでいる部分にはワイングラスが収納されており、ダイニングチェアに人が座っていても、椅子を引いてもらうことなく扉を開けてワイングラスが取り出せるようにと、あえて凹凸をつけて設計しました。また、カップボードの扉面材とダイニングテーブルは、マットな黒で統一しています。


3階 階段
3階のリビングから屋上へ続く階段の格子は、壁のコンクリートとマッチする素材で、インダストリアル感を出すため、あえて接合部分を隠さず大きいボルトを採用しています。

最後に、内装デザインのインスピレーションは、どこから生まれてくるのかお聞きしました。

「もともと建築物が好きなので、街を歩くときに周辺の家や公共の建物を見たり、美術館へ行ったりしてインスピレーションを得ています。美術館では絵を鑑賞する前に、その建物のデザインや照明を見ることも多いです。常にアンテナを張って、自分の家の雰囲気作りに活用できるアイディアを見つけています。」（Y様）