リノベーションとは
リノベーションとは、簡単にいうと「建物に“付加価値”を加えること」、つまり現状の部屋を大きく変えて、「住みたいと思える部屋に改装すること」と言えます。たとえば、以下のような内容の工事がリノベーション工事であると言われます。
・家族の対話の時間を増やしたいから、独立性キッチンからオープン型キッチンへ間取りを変更する
・湿度を一定に保ち、においも吸収してくれるエコカラットという特殊なクロスを壁全面に取り入れて、空気環境を快適にする
・昔の一般的なデザインのマンションを北欧風のデザインに全面的に変更する
一口にリノベーションといっても、様々なやりかたがありますが、すべてのリノベーションの概念に共通しているのは、いずれも、「居住者の好み・希望のスタイルに合わせた改装」であるという点です。単純に「住むため」というより「こんな家に住みたい」という想いを、実際の部屋の間取り、設備、機能など、形にして落とし込んでいるのがリノベーション、ということですね。
間取りを大きく変える、自分好みのデザインに内装をアレンジする、古くなった内装や設備を一新して新築並みに快適に使いやすくする・・・
そういった、「これまで以上」「プラスアルファ」といった要素が、リノベーションでの改装にともなうイメージです。
→ リノベーションには種類がある!?フルオーダーリノベとセミオーダーリノベの違いは?
リノベーションとリフォームの費用
さて、リノベーションとリフォームにはそれぞれどのぐらいの費用面での違いはあるのでしょうか。
結論から言うと、リノベーションだからこのぐらい、リフォームだからこのぐらい、という費用面の差はありません。
基本的にはそれぞれ工事規模により異なります。前述したとおり、リノベーションもリフォームも工事規模によって定義しているわけではありませんので、どっちがどっち、というわけではないのですね。
また、工事規模だけでなく、物件を購入するかどうかによっても総額の費用は異なります。(
こちらの記事では、物件購入とリノベーションを同時に実施した場合の費用を、さらには
ローンに関することはこちらの記事で詳しく紹介していますので、ご参照ください。)ここでは、それぞれざっくりどれぐらいの費用をかければ、どれぐらいのリノベーション工事ができるかを見てみましょう。
費用 |
規模感 |
リノベーション内容 |
100~300万円 |
特定箇所 |
トイレ・キッチンなど 温度調節用便座 / 洗浄機付きトイレなど |
300~800万円 |
中規模工事 |
間取りの変更(3LDK→1LDK) / 子供部屋の増設など |
800~1000万円 |
大規模工事 |
各所設備のアップデート アイランドキッチンへの変更 / 食洗器の備え付け対応など |
1000万円以上 |
物件全体工事 |
各所設備のアップデート アイランドキッチンへの変更 / 食洗器の備え付け対応など + 間取りの変更(3LDK→1LDK) / 子供部屋の増設など |
費用100~300万円のリノベーション
部分的・局所的に工事をする場合は、これぐらいの費用でできます。
例えば、キッチンや洗面台の収納が水で傷んでいるので一新したい、トイレが昔ながらのものなので温度調節便座・洗浄機付きにしたい、といったときに実施するリノベーションです。また、収納スペースが少ないので、リビングの壁一面に改装し新たな収納スペースをつくる、といったこともこのぐらいの費用で実現できます。
費用300~800万円のリノベーション
こちらも部分的なリノベーションにはなりますが、もう少し大規模な工事が可能です。
この費用帯では、主に間取りの一部を変えるような内容になることが多いです。例えば、物件3LDKと部屋数はそこそこあるものの、ひとつひとつが手狭のため、壁をぶち抜いて1LDKにしたい、といった場合。あるいは、以前は広いリビングだったが、子供が大きくなったため個室を用意する必要があり、リビングを壁で仕切って部屋を増設する、といった場合。壁と床、裏側にある配線等をいじる必要がありますので、そうしたリノベーション工事にはこのぐらいの費用が必要になります。費用の幅が大きいのは、結局実現したいこととそこのどのぐらいの手間・工数がかかるかにより、費用が大きく異なる、ということです。
費用800~1,000万円のリノベーション
この費用帯では、全面変更とはいかずとも、かなり大きな改装をすることが可能です。
例えば、マンションの面積の大部分を占めるリビングが、昔ながらのデザインや設備で、住み心地や使い勝手があまりよくない、といった時も、このぐらいの費用をかければ多くの部分に手を入れるリノベーション工事が可能です。間取りの変更はもちろん、昔ながらのキッチンを好みのカラー・好みの機能を配したシステムキッチンに変更するとともに、食器洗い機やオーブンを設置する。あるいは
クローズ型のキッチンを人気の
オープン型のアイランドキッチンに変更する。床材に白い味のある木材を活用し、
西海岸風の部屋にする…などなど。このレベルの投資ができれば、単純な改装の域を超えて、かなり自分好みのデザイン・機能にすることができるでしょう。
費用1000万円以上のリノベーション
この費用帯であれば、平均的な中古マンションであれば物件全体に及ぶレベルで、
デザイン性・機能性の高いリノベーション工事が可能です。
一戸建てであればまた異なりますが、中古マンションであれば古い床材や部屋の内壁を取り除き、住んでいれば目に入ってこない配管・配線の交換といったところから、リノベーション工事が始めることができます。中古マンションであれば物件の骨格・構造部分を変更することはできませんが、裏側の配線・配管、床材や壁材を変更することで、取り返しのつかない水漏れなどのトラブルのリスクを低くすることができます。当然ながら、間取りを変更して、(配管の位置にもよりますが)水回りの変更、リビングを狭くしたり広くしたり、あるいは収納を増やしたり減らしたりするなど、部屋の内部構造を大きく変えることもできます。また、デザインや機能にもこだわって、自分好みのテイストを導入したり、設備機器を新しいものに一新し、新築並の住み心地も実現できるでしょう。一般的にイメージされるリノベーション工事というのは、この規模のものが多いですね。
→ リノベーション・リフォームの費用(相場)はどれくらい?
→ 新築購入と中古+リノベーション、同じ費用ならどちらを選ぶ?
リノベーションとリフォームの資産価値の違いとは?
これまで中古住宅の資産価値といえば、建物の立地条件や築年数のみを基準に判断されており、間取りや内装についてははほとんど評価されていませんでした。しかし、近年では国の方針としても不動産鑑定評価基準等を見直す動きが出てきています。これは、中古住宅における適切なリフォームやリノベーションの実施が、住まいの資産価値を回復させる要素に加えられるということです。
参考:
http://www.mlit.go.jp/common/001109233.pdfさきほど解説したように、リフォームは「住まいのマイナスをゼロに戻すこと」が目的です。古い設備や内装を新しいものに入れ替えるだけのリフォーム工事では、資産価値の向上にまで結びつけるのは難しいといえます。その点、リノベーションは「既存の住まいに新たな価値を創り出すこと」を目的としているため、資産価値の向上に有効です。
例えば、築年数が古い建物は居室が細かく区切られた間取りが多いのですが、近年は開放的でゆったりとした間取りや、必要に応じてフレキシブルに仕切りが移動できる間取りが人気傾向です。大規模リノベーションであれば、間取りを大きく変更して現代のライフスタイルに合った住まいに一新することができます。また、床暖房の設置、窓や壁の断熱性能の改善、バリアフリー化などの実施により、快適性や安全性を高めることも資産価値の向上につながります。
とはいえリノベーションさえすれば、掛けた費用以上に資産価値が上がるというわけではありません。資産価値の向上を一番の目的とするよりも、リノベーション後にどのような暮らしを送ることができるか、住む人のライフスタイルに合わせた計画を立てることが大切です。