リノベーション・リフォームにかかる費用相場
中古マンションのリノベーション費用は、工事の範囲・面積・立地によって大きく異なります。地方よりも都市部、関西よりも関東のほうが相場は高め。さらに近年は建材資材や人件費の高騰により、全体的に値上がり傾向です。特に首都圏では、2020年頃に比べて1〜2割ほど費用が上昇しています。これまでとは相場が変わっていることに注意しましょう。
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費用目安(全国) |
費用目安(首都圏) |
| 部分リフォーム |
約100〜400万円 |
約150〜500万円 |
| フルリノベーション |
約600〜1,000万円 |
約700〜1,200万円 |
上記表の「部分リフォーム」は壁紙・床の張替えやキッチン・浴室などの部分的な改修工事です。「フルリノベーション」は間取り変更・配管更新をともなう全面改修を行うもので、スケルトンリフォームも含みます。
リノベーション・リフォーム費用の内訳
では、実際に費用のあたりを付けるためには、どんなポイントを押さえておけばよいのでしょうか。「最終的には見積りをとらなければわからない」と言ってしまえばそれまでですが、それだとしても、出てきた見積りの金額が、高いのか低いのか妥当なのか、なかなか判断できません。納得のいく工事をするためには、そこはきっちり押さえたいところ。そのためにも、リノベーション・リフォームの費用の内訳をまずは押さえておきましょう。
リノベーション・リフォームにかかる費用は大きく分けて3種類です。
・リノベーション、リフォームの施工にかかる費用
・契約やローンにかかる諸費用
・その他の費用
順番に説明していきましょう。
1.リノベーション、リフォームの施工にかかる費用
リノベーション・リフォームの施工にかかる費用は大きく分けて2種類あります。
◇1‐1.機材・建材にかかる費用
内壁、壁紙、天井、床材、扉など建材。キッチン、バス、洗面台、トイレの手洗い器などの機材。そういったものの費用です。機材・建材は様々なものが存在し、広く一般的に使われている普及品から中級品、高級品があり、どれを選ぶかによって費用は異なってきます。リノベーション・リフォームの魅力といえば、自由度高く部屋の間取りやデザイン、機材などを検討できるところですが、費用との兼ね合いでどう妥結するか、悩ましいところになります。
◇1-2.工事にかかる費用
これはデザイン、設計、施工そのものにかかる工事の費用です。リフォーム・デザインは、様々な人が動きます。どんな部屋にするか設計士がデザインし、それを職人さんが施工していきます。その工事全体を取り仕切る施工管理者、実際に機材や資材をくみ上げて家を作っていく職人、ガス・水道・電気などの業者まで、多くの人が動きます。一般的に、工事の範囲が大きければ大きいほど、人件費も膨らみますので、この部分の費用は膨らみます。
2.契約やローンにかかる諸費用
リフォーム・リノベーションにかかる費用は工事そのものにかかる費用だけではありません。具体的には増築なのか、ローンを組むのか、今すでに持っている家をリノベーション・リフォームするのか、などで別れてきますが、代表的なのは以下のような費用です。
◇2-1.リフォーム・リノベーション全般にかかる費用
記載された契約金額税額により以下の表の、右端の金額が印紙税にかかります。
(左側:契約書記載金額、右側:印紙税の金額)
・1万円以上 100万円以下 200円
・100万円超 200万円以下 400円
・200万円超 300万円以下 1,000円
・300万円超 500万円以下 2,000円
・500万円超 1,000万円以下 10,000円
・1,000万円超 5,000万円以下 20,000円
・5,000万円超 1億円以下 60,000円 (以下略)
ただし、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成された建設工事の請負に関する契約書については軽減措置が設けられています。軽減措置を適用した場合の印紙税の金額は、以下のとおりです。
・1万円以上 200万円以下 200円
・200万円超 300万円以下 500円
・300万円超 500万円以下 1,000円
・500万円超 1,000万円以下 5,000円
・1,000万円超 5,000万円以下 10,000円
・5,000万円超 1億円以下 30,000円 (以下略)
※実際の税金額は印紙税法で定められたものを必ず確認してください
◇2-2.増築の場合にかかる費用
増築の場合は、以下の費用が掛かります。
・建築確認申請手数料
・完了検査手数料
・表示変更登記費用
◇2-3.ローンを利用する場合にかかる費用
ローンを利用する場合は以下の費用が掛かります。
・ローン契約時の印紙税
・融資手数料
・抵当権設定登記費用
・保証料・火災保険料
◇2-4.中古住宅購入の場合にかかる費用
リノベーション・リフォームのみではなく、中古住宅を購入してそれをリノベーション・リフォームする場合は、物件の費用だけでなく以下の費用がかかります。
・売買契約の印紙税
・所有権移転登記費用
・仲介手数料
・不動産取得税
3.その他の費用
この費用はリノベーション・リフォームに直接かかってくる費用ではありませんが、リノベーション・リフォームに伴い、必要になってくる可能性が高い費用のことです。
・新しい住まいに合わせた家具・家電の新調費用
・カーテンの新調費用
・仮住まいの賃料・初期費用
・トランクルームの賃料
・引っ越し代
・追加工事
・差し入れ など
ここまで費用の内訳について解説してきました。ここまでの内容でおわかりいただけたかもしれませんが、リノベーション・リフォームに伴ってかかる費用は、工事の内容やその人の置かれている状況により、大きく異なってきます。ケースバイケースで変わってきてしまいますが、大枠は理解しておきたいですね。
戸建てとマンションリノベーションの費用相場
戸建てとマンションのリノベーションでは、リノベーションできる範囲に違いがあるため、費用面でも変わってきます。
戸建ての場合、基礎や土台、柱や梁、外壁や屋根といった部分までがリノベーションの対象となります。基礎の沈下やひび割れが起きている、白アリによって土台が被害を受けている、外壁にひび割れがあり、内部の柱や梁まで傷んでいるといったケースでは、構造部分の修繕が必要です。建物の状況によっては、建て替えとさほど変わらない程度のリノベーション費用がかかることさえあります。
一方、マンションの場合は自分でリノベーションできる範囲は、○○号室として区分された内側の専有部分のみです。エントランスや共用廊下をはじめ、コンクリートでできた壁や床スラブなどの躯体、パイプスペース、玄関ドアやサッシなどの共用部分は自分でリノベーションすることはできません。共用部分は所有者全員が支払っている修繕積立金を使って、定期的に長期修繕計画に基づいて大規模修繕に行い、改修が実施されていきます。
そのため、マンションは床や天井、配管等も解体してスケルトンにしてのフルリノベーションをする場合も、躯体や外装に関わる工事は含まれません。マンションのフルリノベーションの費用は広さや工事内容にもよりますが1,000万円程度であり、戸建てをスケルトンにしたフルリノベーションほどの費用はかからないのです。
工事内容ごとの費用相場
リノベーションやリフォームの費用は、工事の範囲や設備のグレードによって大きく異なることが特徴です。同じ場所の工事でも、標準仕様(スタンダード)とこだわり仕様(ハイグレード)では最大で1.5〜2倍の差が出ることもあります。
表層リフォームの費用相場
| リフォームの内容 |
費用目安 |
| 壁・天井クロス張替え(スタンダード・6畳) |
約5〜7万円 |
| 壁・天井クロス張替え(ハイグレード・6畳) |
約7〜15万円 |
| フローリング張り替え(スタンダード・6畳) |
約16万円〜 |
| フローリング張り替え(ハイグレード・6畳) |
約25万円〜 |
表層リフォームとは、間取り変更は行わずに壁紙・床材・建具などの仕上げ材を更新する工事です。壁や天井の下地に劣化(カビ・膨れ・歪みなど)がある場合は、補修費が追加されます。一般的にマンションで床を張り替える際には、「遮音フローリング」を使用するように指定されています。
水回りリフォームの費用相場
| リフォームの内容 |
費用目安 |
| トイレ全体のリフォーム |
約30〜80万円 |
| 洗面台の交換 |
約10〜60万円 |
| 洗面室全体のリフォーム |
約20〜100万円 |
| 浴室リフォーム(スタンダード) |
約80〜140万円 |
| 浴室リフォーム(ハイグレード) |
約150〜250万円 |
| キッチンの交換 |
約70〜150万円 |
| キッチン全体のリフォーム |
約160万円〜 |
水回りのリフォームは、設置する住宅設備のグレードによって費用が大きく異なることが特徴。また、キッチンや浴室の位置を変える場合は、配管経路を変更する工事が必要になり高額になりやすいです。
間取り変更リフォームの費用相場
| リフォームの内容 |
費用目安 |
| 間仕切り壁の新設 |
約15〜30万円 |
| 2つの居室を1つにつなげる |
約50〜110万円 |
| 開口部の新設(開き戸) |
約12〜30万円 |
| 開口部の新設(引き戸) |
約15〜40万円 |
部屋をつなげる、壁を撤去する、水回りを移動するなどの構造・設備を含む改修は、リノベーションの中でも大掛かりな工事です。上記表は間取り変更リフォームに関連する工事を、それぞれ個別に施工した場合の費用目安となります。間仕切り壁を新設するよりも、壁を撤去してつなげる工事のほうが高額になるのは、クロスや床材の張替えが必須になるためです。
中古マンションリノベーションの費用事例
中古マンションを購入してリノベーションすることで、立地や間取り、デザインまで自分の理想に合わせた住まいを実現することが可能です。ここでは、リノベーション実例から、どのような空間がどの程度のコストで実現できるのかを紹介します。
49.13㎡(1R)のリノベーション費用【1,080万円】
それまでのシェアハウス暮らしから、30歳の節目を機に中古マンションを購入したお施主様。ライフテージの変化に応じて売却する可能性も視野に入れ、資産性を意識した物件選びをしたそうです。もとは細かく区切られていた2LDKでしたが、間取りを変更して広々とした1Rに一新。角部屋ならではの明るい光が家中に届く伸びやかな住まいに生まれ変わりました。キッチンの腰壁や造作棚の背面は、お気に入りのグリーンで塗装。カウンターや折り上げ天井に取り入れた曲線と、ミッドセンチュリーテイストの家具が調和しています。
| 専有面積 |
49.13㎡ |
| 間取り |
1R |
| 工事費 |
1,080万円 |
53.42㎡(1LDK+WIC)のリノベーション費用【1,000万円】
駅近かつ静かで日当たりの良い物件をリノベーションした実例です。独立キッチンの1LDKから、対面キッチンの1LDK+WICへ間取りを一新。ご趣味がパンやお菓子作りということで、キッチンの天板サイズと素材にとことんこだわりました。料理の頻度もかなり増えたそうです。収納や居室にはあえて扉を設けず、出入りがしやすいように。ベッドルーム〜ウォークインクローゼット〜洗面室を一直線に配置して、効率の良い生活動線を叶えています。
| 専有面積 |
53.42㎡ |
| 間取り |
1LDK+WIC |
| 工事費 |
1,000万円 |
63.62㎡(1LDK)のリノベーション費用【1,270万円】
植物に囲まれた「プチジャングル」がテーマの実例です。南向きの明るい空間に、観葉植物がのびのびと葉を広げます。バルコニーに面する床はタイル張りに。壁はモカグレーの石目調クロスをベースに、グリーンのタイルやボタニカル柄の輸入壁紙がアクセントになっています。リビングに隣接するベッドルームは腰壁でゆるやかに区切り、開放的な住まいに仕上げました。
| 専有面積 |
63.62㎡ |
| 間取り |
1LDK |
| 工事費 |
1,270万円 |
65.68㎡(1LDK+WIC)のリノベーション費用【1,600万円】
阪神淡路大震災を乗り越えたご自宅の実例です。お子さまが独立しご夫婦で暮らすマンションを、老後を見据えてフルリノベーション。もとの3DK(2LDK)の間取りから、扉を極力なくし開放的で回遊性のある1LDKへ一新しました。リビングの引き戸を閉めれば、寝室を間仕切りできます。床や造作家具に天然木をふんだんに使用した、木に包まれるような温かな住まいです。
| 専有面積 |
65.68㎡ |
| 間取り |
1LDK+WIC |
| 工事費 |
1,600万円 |
75.35㎡(2LDK+WTC)のリノベーション費用【1,710万円】
落ち着いたブルーが印象的なリノベーション実例。細かく区切られた3LDKから、回遊動線の伸びやかな2LDKへ一新。LDKを拡張し、アイアンブルーのキッチンに合わせ、クロスもブルーを選び印象的な空間に仕上げました。キッチンと脱衣室・洗面室をつなげたことで、家事の同時進行がしやすいです。寝室〜ウォークスルークローゼット〜玄関も一直線につながっているため、効率よく暮らせます。
| 専有面積 |
75.35㎡ |
| 間取り |
2LDK+WTC |
| 工事費 |
1,710万円 |
リノベーション・リフォーム費用を抑えるには
リノベーション・リフォームはケースバイケースで工事の内訳が異なり、費用にも幅があるということは理解できたと思います。では結局、費用が必要以上に膨らまないようにするには、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
どのような住まいにしたいか、どれくらいお金をかけるか明確にする
ネットや雑誌などで情報収集をして、どのような間取りやインテリアにしたいのか、リノベーションの目的や希望を明確にします。何をするべきかはっきりと分からない場合は、今の住まいでストレスを感じていることを、些細なことも大きなことも、できるだけ具体的に挙げてみましょう。リノベーションで取り入れるべきポイントが見えてくるはずです。
こだわるところ、そうでないところの優先順位を付ける
次に、「こうしたい」と挙げたポイントの優先順位を明確にします。リノベーションで必ず実現したいこと、妥協しても良いこと、費用次第では削っても良いこと、可能であれば追加したいこと、と並べていきましょう。こだわりたい部分とそうでない部分をしっかりと把握することで、予算の範囲内で満足度の高いプランニングが立てやすくなります。
自分でできる作業は自分で行う
手先が器用な方は、DIY(自分で行う)リフォームを取り入れることで、工事費用を抑えるという選択肢もあります。近年のDIYブームもあり、ホームセンターなどで購入可能なDIY用品が大幅に増えました。DIYリフォームは「できる範囲」で無理なく行うことが大切。例えば、棚受けレールと棚板の設置は自分で行うことにして、そのために必要な壁の下地補強は業者に依頼すると安心です。DIYは予想以上に時間が掛かったり、思うように仕上がらなかったりする可能性があることも念頭に置いておきましょう。
担当者に予算をきちんと伝える
「こんな住まいにしたい」という希望が同じでも、予算次第でリフォームプランの内容は変わってきます。例えば「本当は○○万円出せるけれど、もっと安くできたらいいな」と低めの予算を伝えてしまうと、コスト最優先のプランになり、期待していたような提案が受けられない可能性があります。リフォーム会社の担当者には、最初から予算を正直に伝えておきましょう。
リフォーム・リノベーションに使える補助金・助成金・補助金を活用する
リフォームやリノベーションの内容が省エネ・耐震・バリアフリーなど特定の要件を満たす場合は、国や自治体の補助金制度を利用できる可能性があります。最大で100万円以上の補助が受けられる場合もあるため、賢く利用しましょう。
●リフォーム・リノベーションに使える補助金・助成金の例
| 名称 |
対象のリフォーム |
補助額・上限 |
| 子育てグリーン住宅支援事業 |
省エネ改修(窓・断熱等)+その他リフォーム |
上限:40〜60万円/戸 |
| 先進的窓リノベ2025事業 |
窓・ドアの断熱リフォーム |
上限:200万円/戸 |
| 給湯省エネ2025事業 |
高効率給湯器の導入、既存設備の撤去 |
エコキュート:6万円/台 エネファーム:16万円/台 など(加算要件あり) |
| 高齢者等住宅改修費用助成制度 |
高齢者を対象としたバリアフリーリフォーム |
上限20万円 (1〜3割を自己負担) |
●補助金・助成金活用時の注意点
・着工前の申請が原則
事業によって条件は異なりますが、着工前に申請しなければ補助対象にならない制度が多いため、計画段階の確認が必要です。
・登録事業者による施工が条件
補助金制度を利用するためには、原則として国の登録事業者に依頼する必要があります。
・予算上限に注意。
補助金制度には締切りが定められていますが、予算に達すると早期終了することもあります。利用を検討している場合は早めに動くと安心です。
・自治体の補助金
補助金制度には国が実施するものと、自治体(都道府県や市区町村)が実施するものがあります。併用可能なものと不可な組み合わせがあるため、事前に確認しましょう。