住宅の水回りに使用する床材というと、クッションフロアや塩ビタイルが浮かびやすいのではないでしょうか。もともとは公共施設で使われていた天然素材のリノリウムが、再び注目を集めています。リノリウムとはどういった素材なのか、床材として使用するメリットやデメリットにも触れたうえで、施工事例も紹介していきます。
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リノリウムは以前からある素材で、一度、あまり使われなくなったにも関わらず、よさが見直されて、再び注目を集めています。リノリウムとはどのような素材か、再評価されている背景についても触れていきます。
リノリウムは化学物質を思わせる名前で、ビニル系床材のようにも見えますが、実は天然素材からできています。リノリウムは亜麻仁(アマニ)油を主原料とし、石灰岩、松ヤニ、木粉、コルク粉、ロジン、天然顔料などを混ぜて、ジュートに圧着した仕上げ材です。
リノリウムは、主にシート状やタイル状の床材として使われています。そのほかの用途としては、テーブルの天板や椅子の座面など家具の仕上げ材として使われることもあります。
リノリウムは天然顔料が使用されているため、カラーバリエーションが豊富です。また、木目調や大理石調といった柄があります。
ただし、「リノリウム」と呼ばれるもののなかには、リノリウムを模した柄のビニル系床材もあるため、注意が必要です。商品名に「リノリウム調」や「リノリウム柄」とつけられているものは、主にビニル系床材になります。
リノリウムはイギリスで1860年代に開発され、日本でも1920年から製造されるようになりました。しかし、リノリウムは天然素材を使用していることからコストを抑えるのが難しく、製造工程でも手間がかかるという難点があります。また、施工の難易度も高く技術を必要とします。そのため、安価で容易に製造できるクッションフロアや塩ビタイルといったビニル系床材が普及していくと、日本ではリノリウムは敬遠され、あまり使用されなくなっていきました。
ところが、昨今ではシックハウス問題やエコロジーブームにより、環境に配慮した素材が好まれる風潮が生まれました。そこで、人間の身体にも自然にも優しい素材として、リノリウムは再び注目されているのです。また、海外に目を向けると、ドイツや北欧諸国では、天然素材で作られたリノリウムは根強い人気があるとされています。
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詳しくはこちら>>天然素材を原料とするリノリウムは、様々な機能性を持った素材で、ビニル系床材にはない特長があります。リノベーションなどでリノリウムを床材に使用するメリットをまとめました。
リノリウムは天然素材から作られた素材のため、有害物質が発生しにくいことがメリットです。化学物質が含まれていないことから、シックハウス症候群を引き起こす心配を抑えられます。また、使用後に廃棄するときには、生物分解性があるため土に還ります。
それから、リノリウムは天然素材で静電気が起きにくいことから、床材に使用するとホコリやアレルゲンが留まりにくいという特長もあります。リノベーションで床材をカーペットからリンリウムに変更すると、ハウスダストなどのアレルゲンを削減することが可能です。
リノリウムはシックハウス症候群やアレルギーが心配な人も、安心して使える床材といえます。
リノリウムには発火点が高いため、燃えにくいという特長もあります。万が一、火事が起きたときにも延焼しにくく、水や二酸化炭素しか発生しないという点でも安心です。
リノリウムには、亜麻仁油が含まれていることによる抗菌作用があり、清潔に保ちやすいこともメリットです。実際にメチシリン耐性黄色ぶどう球菌や大腸菌O157に対する抗菌効果や、ノロウイルスやA形インフルエンザに対する抗ウイルス効果の実証実験を行った商品も市販されています。
そのため、リノリウムは食中毒対策や院内感染対策が必要となる、保育園や幼稚園、学校といった教育施設や老人ホームなどの介護施設、医療施設の床材として使用されるケースがあります。
リノリウムは弾力性や柔軟性があり、歩行性に優れているという点も特長です。フローリングよりも滑りにくく、万が一、転倒したときにも柔らかいというメリットがあります。こうした特性を活かして、リノリウムはバレエ教室の床材としても使われています。
リノリウムはキズがつきにくく、復元性が高いなど耐久性が高いというメリットもあります。リノリウムを床材に使用すると、家具を置いたことによる凹みがつきにくいため、ダイニングなど椅子やテーブルを動かすことが多い場所や、頻繫に模様替えをしたいケースにも向いています。また、キャスター付きの椅子の使用したときの跡もつきにくいです。
リノリウムの静電気が起きにくく、ホコリが溜まりにくいという特長から、汚れにくいのでお手入れが簡単というメリットもあります。リノリウムの床の掃除は、乾拭きをするだけで済みます。また、リノリウムは基本的にワックス掛けは不要です。
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詳しくはこちら>>様々なメリットがあるリノリウムですが、リノベーションなどで床材に使用すると、施工後の臭いや費用面でのデメリットもあります。
リノリウムを床材として施工した直後は、原料の一つの亜麻仁油による癖のある臭いがあり、不快感を持つ可能性があります。ただし、時間が経つにつれて亜麻仁油の特有の臭いはだんだん薄れていき、健康への影響もありません。
リノリウムの臭いが気になる人は事前にサンプルなどで確認することができないか、リノベーション会社の担当者に相談してみましょう。
リノリウムには天然素材が使われていて材料にコストがかかり、製造工程でも手間がかかることから、一般的にビニル系床材よりも高価です。また、リノリウムの施工に対応できる業者も限られています。
とはいえ、リノリウム調のビニル系床材は比較的安価ですが風合いは異なり、リノリウムならではの特長も持っていません。住まい全体をリノベーションを検討している場合は、全体の費用のバランスも踏まえつつ、リノリウムへの張り替えを検討しましょう。
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詳しくはこちら>>リノリウムは主に病院や老人ホーム、学校といった公共施設のほか、バレエ教室で使われている床材です。最近では住宅でも、床材にリノリウムが使用されるケースが増えてきています。
住宅では、リノリウムは滑りにくく、抗菌作用があり、耐久性が高いといった特長やお手入れのしやすさから、キッチンや洗面所、トイレといった水回りの床材として使われるケースが目立ちます。なかでもキッチンは、リノリウムの燃えにくいという性質からも使用が向いている場所です。
また、有害物質が発生しにくく、滑りにくいことから、子ども部屋の使用にも向いています。あるいは、弾力性があって滑りにくいという特性を活かして、バレエの練習やヨガ、プラティスなどのスペースの床材として使うのもおすすめです。
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詳しくはこちら>>床材にリノリウムを使用する場合、施工箇所やお手入れの面で注意するべきポイントがあります。
リノリウムは紫外線によって変色が起こる可能性があります。そのため、直射日光があたりやすい場所への施工は避けた方が無難です。たとえば、リビングにヨガを楽しむスペースを設けたい場合、窓から奥の方の一部のスペースにだけリノリウムを張り、他の部分はフローリングにするなど、張り分けをするのがおすすめです。
どうしても窓の近くの日のあたる場所にリノリウムを張りたい場合は、窓からの紫外線を抑える対策をとるのが望ましいです。リノベーションで窓ガラスをUVカット効果のあるLow-E 複層ガラスに交換する、あるいは窓ガラスにUVカット効果のあるフィルムを貼るといった方法が挙げられます。また、ウィンドートリートメントの面では、UVカット機能のあるレースカーテンを取り付けると、室内に入る紫外線の量を抑えられます。
リノリウムはアルカリ性の洗剤やワックスに弱いという性質があります。基本的にリノリウムはワックス掛けは不要で、お手入れは乾拭きで行います。
もし、リノリウムのお手入れに洗剤を使用したい場合は、アルカリ性のタイプは変色を起こしやすいため、注意が必要です。中性のタイプのものを薄めて使い、すぐに拭き取るようにします。
また、リノリウムは水を吸い込みにくい素材ですが、表面が摩耗すると吸水しやすくなります。リノリウムはワックスを掛けることによって、耐水性を補うことが可能です。リノリウムにワックス掛けを行うときは、中性のタイプを使用します。ワックスは徐々に取れていくため、使用する場合は定期的なメンテナンスが必要です。
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詳しくはこちら>>リノリウムは、自然素材をふんだんに使った空間やナチュラルモダンの空間にマッチする素材です。リノリウムは天然素材を原料としていますが、色や柄によっては無機質な素材のような雰囲気を醸し出します。水回りを中心に、住宅の床材にリノリウムを施工したおしゃれな施工事例を紹介していきます。
https://kanocd.exblog.jp/20656143/
水回りの床材をリノリウムに統一した住宅の事例です。フローリングはナラの無垢材で自然塗装を施し、壁は湿度の調整や有害物質の低減効果のある自然素材の壁材を使用するなど、素材にこだわった住まいでもあります。
LDKはミディアムブラウンのフローリングと、キッチン部分のシックな黒に近いグレーのリノリウムのコントラストの美しさが目を惹きます。暖炉回りのタイルには濃いグレーが用いられ、まとまりのある空間となっています。
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床にリノリウムが張られた洗面室。住まい全体の内装が統一されているなか、モザイクタイルの壁がアクセントになり、遊び心も感じられます。
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家事室の床材もリノリウムが使用されています。洗濯物をピンチハンガーなどに掛ける場所で、外部の物干し場に隣接している機能的な空間です。
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乳白色のアクリル板で囲まれた犬のためのスペース。お手入れがしやすく抗菌作用があることから、ここの床材にもリノリウムが使われています。
http://www.iwate-crafthouse.co.jp/sekourei/sekourei09/
リノリウムのほか、唐松の無垢材のフローリングやオガファーザーの壁紙など、自然素材をふんだんに取り入れた住宅の事例です。
現しの梁や建具、フローリングなど木材がふんだんに使用されたLDK。リノリウムの床のキッチンには、大工さんによるシンプルでナチュラルな造作キッチンが備えられています。
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洗面所の床材もリノリウムで、洗面化粧台も大工さんによる造作です。鏡の上部の窓から光が降り注ぐ明るい空間となっています。壁面のモザイクタイルがナチュラルな空間にマッチしています。
トイレの床材として、リノリウムを採用した事例です。背面のラーチ合板の壁がアクセントウォールとなり、ナチュラルでスタイリッシュなトイレが実現しました。クリーム色のリノリウムも温かみのある雰囲気を醸し出しています。
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詳しくはこちら>>リノリウムはビニル系床材と比較するとコストがかかりますが、機能性の高さが魅力です。部屋の一部の床をリノリウムにするという方法もあります。また、天然素材を取り入れた住まいにしたい場合も、リノリウムは選択肢になります。リノリウムへの張り替えには技術を要するため、リノベーション会社に相談してみましょう。