オシャレなイメージのあるコンクリート打ちっぱなし。デザイナーズマンションでは、コンクリート打ちっぱなしの物件がよくみられます。一方で、暮らしにくいといった声も聞かれます。そこで、コンクリート打ちっぱなしの住宅について、メリットやデメリットを紹介したうえで、メンテナンスについても触れていきます。
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コンクリート打ちっぱなしは躯体を活かした仕上げの方法です。コンクリート打ちっぱなしという仕上げとは何か、実現できる構造や部位に触れながら解説していきます。
コンクリート打ちっぱなしは、構造がRC(鉄筋コンクリート造)やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)による建物の場合に選択できる仕上げ方法です。RCの建物を支える骨組みとなる躯体は、鉄筋を組んで型枠にコンクリート流し込んでつくられています。SRCの躯体は、鉄骨のまわりに鉄筋を組んでいるという違いがありますが、鉄筋を組んで型枠にコンクリートを流し込んでつくるという点では同じです。
このコンクリートの躯体に、一般的な建物では外壁であれば塗装やタイル、内壁は壁紙や塗装などで仕上げをします。こうした仕上げをせずに、コンクリートの躯体をそのまま見せる仕上げ方法が、コンクリート打ちっぱなしです。外壁は耐水性を向上させるために、通常、撥水剤の塗布が行われます。
コンクリート打ちっぱなしは、主にデザインにこだわったマンションや戸建てで採用されています。
RCやSRCの建物でコンクリート打ちっぱなしにできるのは、躯体の壁や柱、梁、天井スラブの部分です。マンションの場合を見ていくと、壁のすべてが躯体ではありません。SRCのマンションはラーメン構造が一般的ですが、RCのマンションの場合、ラーメン構造のケースと壁式構造のケースがあります。ラーメン構造は柱と梁で支える構造で、外部に面した壁や隣戸との境となる界壁は躯体ですが、間仕切り壁はLGSと呼ばれる軽量鉄骨などの間柱にプラスターボードを取り付けてつくられています。壁式構造は壁で支える構造であり、外部に面した壁や界壁のほか、間仕切り壁の一部も躯体です。いずれの構造でも、一般的なマンションで、室内側でコンクリート打ちっぱなしにできるのは一部の壁になります。
また、コンクリート打ちっぱなしの建物は、外壁と内壁の両方が打ちっぱなしの建物と、外壁と内壁のいずれかが打ちっぱなしの建物があります。デザインによる部分もありますが、外部に面した壁の断熱の問題にもよるものです。
コンクリートの躯体の外側に断熱材を施工するのを外断熱、躯体の内側に断熱材を施工するのを内断熱といいますが、いずれかを行わなければ、室内は外部の気温の影響を受けやすい状態になります。
内断熱の場合、外壁をコンクリート打ちっぱなしにして、内壁側は断熱材を施工してプラスターボードを貼り、壁紙などで仕上げます。外断熱の場合は、外壁側に断熱材を施工してタイル貼りなどとして、内壁をコンクリート打ちっぱなしにします。
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詳しくはこちら>>コンクリート打ちっぱなしの建物には、どういったメリットがあるのでしょうか。コンクリート打ちっぱなしの仕上げによる美観の面やコンクリートの性質、RCやSRCという構造の面からみていきます。
コンクリート打ちっぱなしは、コンクリートの質感を活かすことによるクールで都会的なイメージがあり、スタイリッシュな空間になることが魅力です。コンクリートは形状の自由度が高いため、コンクリート打ちっぱなしの曲線の壁を設ける、ガラスブロックと組み合わせた壁にするといったことも可能です。あるいは、通常は打ち放し用の合板を型枠に使用しますが、杉板を用いて木の目を出すといった手法もあります。
コンクリートは金属やガラス、タイルといった無機質な素材だけではなく、木とも相性のよい素材です。異素材を組み合わせたインテリアコーディネートにすることで、よりオシャレな空間を実現できます。ダクトレールにスポットライトを取り付けて、カフェやショップ風のインテリアを目指すのにも向いています。
また、コンクリート打ちっぱなしは意外かもしれませんが、和の空間にも合う仕上げ方法です。和室にコンクリート打ちっぱなしを取り入れると、コンクリートの質感が凛とした佇まいとなり、スタイリッシュな和モダンの空間になります。
コンクリート打ちっぱなしは、RCあるいはSRCの構造の建物でできる仕上げ方法です。RCやSRCは木造と比べて、柱と柱の間の間隔を広くとれるため、開放感のある大空間を実現できることがメリットに挙げられます。間仕切り壁をあまり設けず、緩やかにつながる住まいにしたいといったケースにも向いています。
RCやSRCはコンクリートでつくられているため、木造よりも防音性に優れていることもメリットです。コンクリートは木よりも比重が重いため、音を通しにくいという特徴があります。室内の音が漏れにくく、反対に近隣の人の話し声や道路で車が通行する音などが聞こえにくいです。防音工事は必要ですが、シアタールームや楽器の演奏室を設けたいといったケースにも向いています。また、静かな環境で暮らしたい人にも、過ごしやすいといえます。
コンクリート打ちっぱなしの建物はRCやSRCで、火災に強いことから、木造よりも火災保険料や地震保険料が安いこともメリットです。コンクリートは不燃材料であり、火や熱に強い素材です。RCは1000度の火に2時間さらされても燃えません。一方、木造は火災の際に260度に達した際に発火してしまい、1000度になる前に倒壊するとされています。
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詳しくはこちら>>コンクリート打ちっぱなしの建物には様々なメリットがある一方で、デメリットもあります。特に、外部に面する壁の外壁も内壁もコンクリート打ちっぱなしになっている場合は、快適に過ごしにくいことが危惧されます。コンクリート打ちっぱなしの仕上げによるデメリットをまとめました。
外部に面する壁が外壁も内壁もコンクリート打ちっぱなしで断熱材が施工されていない場合は、外気の影響を受けやすい状態です。また、最上階の天井が外断熱ではなく、コンクリート打ちっぱなしになっているケースも同様です。また、コンクリートは熱伝導率が高いことからも、外気の気温が伝わりやすいため、冬は冷気をため込むため寒く、夏は熱気をため込んで暑くなりやすい状態です。そのため、暖房をつけても部屋が暖まりにくく、冷房をつけても部屋が冷えにくいことから、過ごしにくいだけではなく、光熱費が高額になってしまいやすいです。
外部に面する壁の外壁も内壁もコンクリート打ちっぱなしで断熱材が施工されていないケースでは、外気の影響を受けやすいことから、結露やカビも発生しやすい状態となります。冬場に外部と室内の温度差が大きい状態のとき、外部の冷気が壁や窓から伝わり、室内の湿気を含んだ暖かい空気が冷やされると結露が発生します。そして、結露を放置してしまうと、カビが発生する原因になります。
カビは健康被害をもたらすこともあるため、結露をこまめに拭いたり、除湿器を使ったりするなどの対策が必要です。
コンクリート打ちっぱなしは、汚れが目立ちやすいこともデメリットに挙げられます。コンクリート打ちっぱなしはコンクリートならではの風合いを活かした仕上げですが、塗装やタイル、内壁では壁紙などによる仕上げをしないため、汚れがつきやすい状態です。特に外壁は雨水や紫外線による影響から、シミや変色が起きやすいです。
コンクリート打ちっぱなしは、現場で施工を行う施工業者の腕によって、仕上がりが左右される点もデメリットです。コンクリートの打設は、基本的にやり直しの効かない作業です。RCやSRCの一般的な建物は仕上げを行う前提のため、施工業者はコンクリートの表面の美しさをさほど求められません。一方、コンクリート打ちっぱなしにする場合は、コンクリートの地肌を見せるため、技術が必要です。
コンクリート打ち放しにする場合は、コンクリートを打ち込む前の準備段階やコンクリートの流し込み、締め固めや養生といった各工程で、職人に緻密な作業が要求されます。また、季節に応じて施工方法を調整することが必要です。特に、型枠の継ぎ目は難しく、締め固めが甘いと生コンが漏れてしまうことや、合板ごとに段差が生じてしまうといったケースもあります。そのため、コンクリート打ちっぱなしの実績が豊富で、技術やノウハウがある施工業者に依頼することが大切です。
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詳しくはこちら>>メリットもデメリットもあるコンクリート打ちっぱなしの建物。コンクリート打ちっぱなしのマンションを購入する場合や借りる場合、快適に暮らすためには注意点があります。
コンクリート打ちっぱなしのマンションで、外気の影響を受けやすい、結露やカビが発生しやすいといったトラブルが起きやすいのは、外壁も内壁もコンクリート打ちっぱなしになっている物件です。
コンクリート打ちっぱなしはオシャレなイメージがあり、外部に面する壁の外壁も内壁も打ちっぱなしになっていると、見た目はカッコいいかもしれません。外壁がコンクリート打ちっぱなしの場合、ステータス感のある建物となり、内壁が打ちっぱなしの場合はオシャレなインテリアを楽しめます。しかし、断熱施工がしていないと考えられるため、夏は暑く冬は寒い、結露が発生しやすいのでカビができやすいというデメリットがあります。また、光熱費も高くなることが考えられます。
コンクリート打ちっぱなしのマンションで暮らす場合は、断熱施工について確認することが大切です。外壁も内壁もコンクリート打ちっぱなしで断熱施工されていない場合は、暑さや寒さ、結露の面などで暮らしにくさを感じる可能性があることに留意しておきましょう。
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詳しくはこちら>>コンクリート打ちっぱなしの外壁は風雨や紫外線の影響によって劣化していくため、定期的なメンテナンスが必要です。主な劣化症状として、ひび割れやシミ、カビの発生が挙げられます。
コンクリートのひび割れは、地盤沈下といった構造上の問題や施工不良のほか、乾燥による収縮や凍結と融解の繰り返し、中性化などによって起こります。このうち、構造上の問題以外の要因で多いのは乾燥による収縮です。また、ひび割れが生じた箇所に雨水が染み込むとシミができるため、美観も損なうことになります。
また、コンクリート打ちっぱなしはコンクリートが外気に触れる仕上げです。コンクリートに含まれる水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素に反応して炭酸化が起こると、アルカリ性であった状態が弱くなって中性化が進んでいきます。すると、内部の鉄筋が錆びることで膨張して、コンクリートにひび割れを生じさせます。内部に水が入り込む状態となり、さらに鉄筋が錆びて膨張していき、コンクリートの剥離などを引き起こすことがあります。
あるいは、日当たりや風通しが悪く、湿気が多い立地の場合、コンクリートの表面にカビが生えるといったケースもみられます。
コンクリート打ちっぱなしは、特に外壁では劣化症状によって、美観を損なうだけではなく、構造上の問題も発生する恐れがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。
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詳しくはこちら>>外壁がコンクリート打ちっぱなしのマンションでは、どの程度の頻度でメンテナンスを行うべきなのでしょうか。使用する素材や工法ごとに、期待できる効果やメンテナンスの頻度、費用の目安などを紹介したうえで、一般的なメンテナンス周期についても触れていきます。ただし、工事費用は、施工面積や足場の設置費用などによっても変わります。
撥水剤は防水性を高める効果があり、雨染みを防ぐ目的で使われます。新築時にも、コンクリート打ちっぱなしの外壁に撥水剤の塗布が行われるのが一般的です。撥水剤は無色透明でコンクリートの質感を損なわない一方、シミなどをカバーできません。美観が損なわれていて、新築時のような状態に戻したい場合には不向きです。また、耐久年数が2~7年程度と短いため、メンテナンスの頻度が高くなるというデメリットもあります。撥水剤の塗布にかかる費用は1,500円/㎡前後が目安です。
弾性塗料とは、可塑剤などの添加剤を配合することで、伸縮性を持たせた塗料です。コンクリートの表面でひび割れが起きた場合にも、ひびに追随するため、ひび割れが表面化するのを防ぐことができます。ただし、コンクリートの表面を塗りつぶすことになるため、ひび割れなどの補修の跡を隠すことができますが、基本的にコンクリートの質感は失われてしまいます。弾性塗料はコンクリートの表面にひび割れができていて、コンクリート打ちっぱなしの仕上げから変える場合に向いています。弾性塗料の耐久年数は6~15年程度で、工事費用は2,700円/㎡程度が目安です。
カラークリヤー工法とは、透明な塗料に着色剤を混ぜた色つきのクリヤー塗料を塗布するものです。カラークリヤー工法はコンクリートの質感を活かしながら、シミをカバーするため、補修の跡が目立ちにくく、施工前よりも美観が向上することがメリットです。また、防水性能が高く、コンクリートの中性化を防ぐ効果も期待できます。カラークリヤー工法はコンクリートを保護して、美観を向上させたいケースで向いています。カラークリヤー工法の耐久年数は塗料の樹脂の違いなどによって、5年~15年程度です。工事費用は3,500円前後が目安になります。
昨今、コンクリート打ちっぱなしの外壁のメンテナンスで主流となっているのは、ファンデーション工法です。耐久性や耐候性の高い水性のカラークリヤー塗料を用いて、コンクリートの質感を再現していく工法になります。黒ずみやシミ、補修の跡が多く、著しく美観が損なわれているようなケースでも、コンクリートを保護するとともに、新築時のような外観によみがえらせることができます。ファンデーション工法の耐久年数は10~15年程度で、工事費用は5,000円前後が目安です。
マンションでは大規模修繕を行うタイミングに合わせて、コンクリート打ちっぱなしの外壁のメンテナンスを行うのが一般的です。大規模修繕の周期は一般的に10~15年に1回であり、12年ごとに行うのが標準的なサイクルになります。メンテナンス周期に見合った耐久年数を持つ素材を使用することが大切です。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>コンクリート打ちっぱなしの住まいは、デザイン性が高い物件が多くオシャレです。断熱施工がされている物件なら、ほかの仕上げ方法の住まいと同様に快適に過ごせます。ただし、壁がコンクリート打ちっぱなしの場合、コンクリートの性能を維持して、美観を保つためには定期的なメンテナンスが必要なことに留意しましょう。