建築物の省エネ性能の向上を目的として制定された建築物省エネ法は、何度か大きな改正が行われています。2024年には新しい省エネ性能表示制度がスタートし、2025年には全ての建築物の省エネ性能適合が義務付けられます。
建築物省エネ法の概要を押さえたうえで、今後の改正の動きや今後の施行予定などについて紹介していきます。
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建築物省エネ法は正式名称を「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」といいます。建築物のエネルギー消費量が増加していることから、建築物の省エネ性能の向上を目的としています。
建築物省エネ法は2015年(平成27年)に公布、2016年・2017年に施行され、主な点としては、大規模の非住宅には省エネ基準適合義務、大規模の住宅と中規模の非住宅・住宅には届出義務が課されました。
改正建築物省エネ法は建築物省エネ法の一部を改める改正法です。2019年(令和元年)に公布された改正建築物省エネ法は2021年(令和3年)に施行され、中規模の非住宅が省エネ基準適合義務の対象へ追加され、戸建てなどを設計する建築士から建築主への説明義務制度が創設されました。
また、令和4年(2022年)に公布された改正建築物省エネ法の主な改正点として、2025年4月からの全ての新築の建築物の省エネ基準適合義務化が挙げられます。
*新たな「建築物の省エネ性能表示制度」
2024年4月から建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度がスタートします。事業者に対して、新築の分譲戸建てや分譲マンション、買取再販住宅、賃貸住宅や貸し事務所ビル、貸しテナントビルの販売や賃貸の広告などに、省エネ性能の表示ラベルを表示することを努力義務とするものです。
これにより、消費者が住宅などを購入したり、借りたりするときに、省エネ性能を把握して比較検討できるようにすることを目的としています。
参照/国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」
*大規模な非住宅建築物の省エネ基準の引き上げ
省エネ基準の引き上げの対象となるのは、延床面積が2000平米以上の大規模非住宅建築物です。大規模非住宅建築物は省エネ基準への適合が既に義務付けられているため、新たな基準に適合しなければ、建てることができません。
改正前の一次エネルギー消費量基準(BEI)は全用途共通で1.0でしたが、「工場等」は0.75、「事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等」は0.8、「病院等・飲食店等・集会所等」は0.85と用途ごとに区分され、15%~25%強化されます。
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詳しくはこちら>>2021年4月から建築物省エネ法では、戸建てや小規模店舗、小規模オフィスといった300平米未満の小規模の非住宅・住宅の新築・増改築を行う建築主に対して、建築士による省エネ性能説明義務制度が設けられています。建築士が建築物の省エネ性能の評価を実施し、建築主に対して評価結果の説明を行うことを義務付けたものです。
現行制度では、小規模の非住宅・住宅は省エネ基準適合義務化の対象外です。ただし、2021年4月からは省エネ性能向上の努力義務から強化され、省エネ基準適合の努力義務への変更も行われています。一般的に小規模建築物の建築主は省エネに関する知識を十分に持っていないことが考えられるため、建築士からの説明により省エネへの理解を深めることで、省エネ基準適合を促すという狙いがあります。
省エネ性能説明義務制度の流れを見ていきます。
まず、設計契約前の事前相談の段階で、建築士から省エネの必要性や効果などに関する情報提供が行われます。
次に建築士が設計業務として、建築物の省エネ性能の評価と評価結果の説明を行うことについて、建築主への意思確認が実施されます。建築主は、説明は不要な場合には、意思表明書面の作成が必要です。意思表明書面は建築事務所で15年間の保存が義務付けられています。
そして、設計契約を結んだ後、建築士は設計段階で設計した建築物の省エネ性能評価を行います。建築主に対して、建築物の省エネ基準への適否と省エネ基準に適合していない場は省エネ性能を確保するための措置について、書面を交付して説明が行われます。
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詳しくはこちら>>2025年4月は全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられるという大きな変革となります。また、これに合わせて建築基準法の改正によって、4号特例が縮小され、建築確認申請が必要となる建築物の範囲が広がります。
現行制度では、省エネ基準適合が義務付けられているのは300平米以上の中規模・大規模の非住宅です。300平米以上の中規模の住宅は届出義務、300平米未満の非住宅・住宅は説明義務となっています。2025年4月には全ての新築の非住宅・住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。
また、建築物を建てるときなどに必要な建築確認手続きにおいて、省エネ基準への適合性が審査されます。省エネ基準に適合していない場合には、確認済証が交付されず工事に着工できません。
これまでは増改築を行う場合にも、省エネ基準適合が義務化されている種別の建築物では、増改築後の建築物全体が省エネ基準に適合することが求められていました。2025年4月からは、増改築を行う際に省エネ基準への適合が求められるのは、増改築部分のみとなります。
たとえば、増改築部分を省エネ基準に適合させるためには、増築部分の屋根に断熱材を施工する、断熱性の高いサッシ・ガラスを設置する、一定の性能以上の空調設備を設置するといった対応が必要です。
300平米未満の非住宅・住宅も省エネ基準適合義務化の対象となり、建築確認手続きの中で適合性が審査されることから、4号特例が縮小されます。
4号建築物とは、建築基準法6条4号に規定された建築物で、木造は2階建て以下で、延べ床面積500平米以下、軒高9m・高さ13m以下の建築物(特殊建築物を除く)、木造以外は平屋で延べ床面積200平米以下の建築物を指します。
4号建築物は現行の制度では、建築確認・検査が必要となるのは都市計画内に建築をする場合のみで、審査省略制度の対象です。
2025年4月からは4号建築物は新2号建築物と新3号建築物に分かれます。新2号建築物となるのは、2階建ての建築物や延床面積200平米を超える建築物です。全ての地域で建築や大規模な模様替え、大規模な修繕を行う際に建築確認・審査が必要となり、審査簡略制度の対象から外れます。新3号建築物になるのは、平屋で延べ床面積200平米以下の建築物はで、引き続き都市計画区域内に建築する場合のみ建築確認・審査が必要で、審査簡略制度の対象です。
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詳しくはこちら>>過去に大きく建築物省エネ法が改正されたのは、2019年(令和元年)の法改正によるもので、2021年に中規模の非住宅が省エネ基準適合義務化と、前述した省エネ性能の説明義務制度が施行されました。2024年時点では現行制度となります。
また、300平米以上の中規模・大規模の住宅は届出義務の対象ですが、所管行政庁の審査手続きの合理化が図られました。省エネ基準に適合していない場合に指示・命令などを実施することに重点を置くためです。
建築物省エネ法が2017年4月に全面施行した際には、省エネ基準適合義務化の対象は2,000平米以上の大規模の非住宅のみでした。届出義務となっていた中規模の非住宅、中規模・大規模の住宅のうち、中規模の非住宅のみが適合義務に移行した形です。
国土交通省の「改正建築物省エネ法の概要(令和2年6月版)」によると、2017年の新築着工棟数に占める割合では大規模の非住宅は0.6%、中規模の非住宅は2.8%で、合計してもわずか3.4%に過ぎません。しかし、エネルギー消費量は大規模の非住宅は36.3%、中規模の非住宅は15.9%の合計52.2%で、この改正によってエネルギー消費量の5割を占める建築物の省エネに対応できる計算になります。
300平米以上の中規模・大規模の非住宅は、所管行政官庁、または登録省エネ判定機関への省エネ性能確保計画の提出が必要です。それにより、交付された適合判定通知書を建築確認申請の際に提出するという流れになります。また、確認審査では省エネ基準適合の確認、完了検査においては省エネ基準適合の検査が行われています。
参照/国土交通省住宅局住宅生産課建築環境企画室「改正建築物省エネ法の概要」
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詳しくはこちら>>国土交通省では改正建築物省エネ法の改正内容の周知を図るため、主に事業者向けに「改正建築物省エネ法オンライン講座」のWEBサイトを開設しています。パソコンやスマートフォン、タブレットで閲覧することが可能です。
「改正建築物省エネ法オンライン講座」では、国土交通省が開催した法改正などに伴う説明会や省エネ計算などに関する講習会の動画が公開されています。オンライン講座のテキストとなる資料が用意されている場合には、ダウンロードや印刷を行うことができます。また、講座によっては質疑応答集のリンクがあります。
たとえば、説明義務制度については、「概要」と「実演ドラマ」の2つが用意され、詳しく解説が行われています。
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詳しくはこちら>>中古住宅もリフォーム・リノベーションによって、省エネ性能の高い住まいに変えることが可能です。省エネ性能の高い住まいは夏は涼しく、冬は暖かい快適な空間となり、エネルギー消費量の減少によって光熱費の削減にもつながります。
省エネ性能を高めるためにポイントとなるのが、高断熱・高気密と高性能な設備機器の導入です。
リフォーム・リノベーションによって、高断熱・高気密を実現できれば、室内は外気の影響を受けにくくなります。また、給湯は家庭のエネルギー消費量の多くを占めるため、ガス給湯器や電気温水器を高効率のタイプに交換すると、エネルギー消費量を大幅に削減できます。太陽光発電システムの導入によって電気を創ると、CO2排出量の削減にも貢献できます。
ここでは、主に木造の戸建ての高断熱・高気密リフォーム・リノベーションについてみていきます。
住まいの断熱とは、断熱材などによって建物の外側と内側を仕切る素材の熱伝導率を下げて熱移動を妨げ、外気温の影響を受けにくい状態にすることをいいます。
高断熱にするためのリフォーム・リノベーションでは、壁や天井、床下に断熱材を入れる方法があります。
また、窓は壁よりも熱の出入りが大きいため、窓の断熱リフォームも有効です。古いサッシは断熱性の高い新しいサッシに交換すると断熱性を高められますが、窓枠を撤去すると大がかりな工事が必要になるため、カバー工法で取り付けられるリフォーム用の商品もあります。
サッシはアルミフレームよりも樹脂フレームの方が断熱性が高く、ガラスを複層ガラスにすることでも断熱性を高められます。
壁や天井、窓枠などのちょっとした隙間から空気が出入りすることも、住まいが外気温の影響を受ける要因となるため、気密性も重要です。省エネリフォーム・リノベーションでは高断熱を意識しがちですが、高断熱と高気密の両方の工事を行うことで、より省エネ性能を高めることができます。
ただし、リフォーム・リノベーションで高気密化を図るには、基本的に大がかりな工事が必要です。外壁側の壁や天井の内部の断熱材の上に防湿・気密シートを貼ります。あるいは躯体の隙間から室内に風が侵入するのを防ぐために、天井と壁、壁と床の取り合いの部分などに気流止めを設置します。
部分的なリフォームでは、サッシの交換リフォームや内窓の設置は気密性を向上する効果もあります。
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詳しくはこちら>>中古住宅の古民家は耐震性や断熱性、気密性が低いケースがある点に注意が必要です。古民家の多くは1981年5月末までの建築確認で用いられていた旧耐震にもとづいているため、現行の耐震基準を満たしていない可能性があります。また、古民家に暮らすと、断熱性や気密性の低さから寒さを感じがちです。
ただし、古民家のリフォーム・リノベーションで耐震補強工事や断熱工事を行うと新築住宅を建てるのと変わらない程度の費用がかかることがあります。
そこで、古民家を探すときには、事前にパートナーとなるリノベーション会社を探して、リノベーション費用がどの程度かかるか、間取りなどを理想の住まいにできるかといった点を相談しながら進めていくのがおすすめです。
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詳しくはこちら>>2024年4月から新たな建築物の省エネ性能表示制度がスタートすると、今後は省エネ性能が住宅の資産価値に大きく影響するようになっていくことが見込まれています。2025年には新築住宅で省エネ基準適合が義務化されることからも、住まいのあり方として省エネがより意識されていきそうです。
グローバルベイスでは、物件探しからリノベーションプランの設計、リノベーション工事までのサービスをワンストップで提供しています。リノベーションはもちろん、資産価値を重視した物件探しについてもご相談ください。