歴史ある街並みを歩いているとき、雑誌やSNSでレトロな日本家屋の写真を見ているとき……。美しい格子戸に思わず目を奪われたことはないでしょうか。和の趣があり古き良き日本家屋の象徴でもある格子戸ですが、実は現代の住まいに新たな魅力をもたらす建具でもあるのです。しかし、いざ新築やリノベーションの際に取り入れようとすると、「本当に自分の家に合うのだろうか?」と不安になることも。そこで今回は格子戸の種類や魅力、注意点などを詳しくご紹介します。新築やリノベーションで素敵な空間づくりがしたい方は、ぜひ参考にしてください。
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格子戸は日本の伝統的な建具の一つで、細い木材や竹を縦横に組んだ戸のこと。縦の木材を「竪子(たてこ)」、横の木材を「貫(ぬき)」と呼び、竪子と貫を組んだ部分を「組子」や「格子子」と呼びます。格子状の枠組みにより軽量で開閉しやすく、意匠性や通気性の高さも魅力です。本来は格子の間が抜けていますが、最近はガラスや薄い板などをはめたものがよく使われます。
昔から日本では高温多湿な気候に合わせて、家全体を風が吹き抜ける設計がされてきました。そこで西洋のドアのようにしっかりと空間を区切るのではなく、柔らかくゾーニングしながらも光や風を感じられる格子戸が使われてきたのです。平安時代には格子戸の原型である建具が登場しており、江戸時代頃からは武家住宅や町家にも取り入れられるようになりました。明治時代以降、西洋風の住宅様式が日本に入ってくると格子戸が使われる機会は減りましたが、最近は格子戸がもつ美しさが見直されており、現代風にアレンジされた格子戸も増えています。
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詳しくはこちら>>格子戸は一見シンプルなデザインながら、組み方によって多彩なバリエーションがあります。ここでは代表的な種類をいくつか紹介しますが、実際にはさらに細かなバリエーションが存在し、日本の各地域で独自の発展を遂げてきました。
例えば、京町家では「糸家格子」や「酒屋格子」など、その家の職業を表現する格子デザインが見られます。これらは装飾的な役割だけでなく、実用性も兼ね備えています。酒屋の格子が太くて頑丈なのは、運搬中の酒樽との衝突に耐えるため。糸屋では細い糸を商品として取り扱うため、十分な採光がとれるように格子の上部が大きめに開いたデザインになっています。
現代の住まいで格子戸を取り入れる際も、デザインの好みはもちろんのこと、採光の度合いやプライバシーの確保など、自身のニーズに合わせて選ぶことが大切です。またデザインの複雑さは価格にも影響するため、予算と相談しながら選ぶことをおすすめします。
マス格子戸とは、縦横にマス目状に正方形や長方形が並んだ格子戸です。シンプルなデザインなので、純和風の建築物はもちろん、モダンな雰囲気にも合わせやすいのが特徴。マス目の大きさによっても印象が変わります。大きめのマス目ならスタイリッシュで開放的な印象に、小さめのマス目なら上品な印象になるでしょう。
横格子戸とは、水平方向の細い材を一定の間隔で並べて組んだ格子戸です。横に一直線に伸びるラインが美しく、部屋の横方向の広さが強調されます。ブラインドを思わせるデザインは、モダンな部屋にも違和感なく溶け込むでしょう。
竪格子戸とは、垂直方向の細い材を一定の間隔で並べて組んだ格子戸です。室内の引き戸や緩やかに空間を仕切るパーティションなど、さまざまなシーンで用いられます。すっきりとした縦のラインが上品な雰囲気を醸し出し、空間に高級感をプラス。実用面としても、ホコリもたまりにくいという利点があるデザインです。
吹寄せ格子とは、数本の細い材を寄せて1組のグループとし、それらを広い間隔を空けながら配置する独特の格子デザイン。よく見られるのは、2本ずつ吹き寄せたタイプです。規則性はありながらも、すべての材を等間隔に並べた格子戸よりも変化を楽しめます。
荒組格子戸とは、縦横の材の数を減らし、広めの間隔をとって組んだシンプルな格子戸です。装飾過多にならず、さまざまな建築様式に調和します。また材料の数が少ないためコスト面でも有利で、お掃除がしやすいのも魅力です。
木連れ(きづれ)格子戸とは、縦横等間隔で組まれた格子戸のこと。正方形が連続するシンプルな見た目で、和風からモダンまで幅広く対応できます。正方形の寸法は縦横3cm前後でつくられることが一般的です。
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詳しくはこちら>>格子戸の主なメリットは「開放感・採光性・通気性」の3つです。素材を格子状に組むという独特の構造によって、単なる仕切りや装飾以上の機能を果たし、暮らしの質を高めてくれます。では、3つのメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1つ目のメリットは、格子の隙間から外の景色や光が見えるため、閉めていても開放感があること。室内が狭く感じられることを防ぎ、より広々とした印象を与えられます。特に狭小住宅では、この特性が大きな利点となるでしょう。
2つ目のメリットは、格子の隙間から自然光が入るため、部屋の明るさを保てることです。照明の使用を減らし、住まいのエネルギー効率を高めることもできます。また、直射日光を和らげながら室内に入れるため、眩しさを軽減しつつ、柔らかく落ち着いた雰囲気を作り出せるのも魅力です。季節や時間帯による光や影の変化も楽しめ、空間に豊かな表情をもたらします。
3つ目のメリットは、格子の隙間から空気が流れることです。通気性をよくしたい部屋や、湿気やカビが気になる場所の間仕切りとして使うと、ほどよく視線を遮りつつ風を通すことができます。
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詳しくはこちら>>格子戸は多くの魅力的な特徴を持つ一方で、いくつかの課題も抱えています。これらのデメリットを理解し、適切に対処することで、格子戸のメリットを最大限に活かすことができます。格子戸の主なデメリットは「メンテナンスの手間・気密性の確保の難しさ」の2つです。現代の生活様式や住宅性能と相反する部分があり、格子戸の採用を躊躇する要因となることもあります。これらの課題に対しては、デザインや素材の工夫で解決できることもあるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1つ目デメリットは、複雑な構造を持つため、隙間にホコリや汚れがたまりやすく、お掃除の手間がかかること。お掃除を楽にしたい方は、ホコリのたまりにくいデザインの格子戸を選びましょう。また、木製の格子戸の場合は、定期的な塗装や防虫処理が必要となることも。どのようなメンテナンスが必要になるのか、事前に確認してから採用するのがおすすめです。
2つ目のデメリットは、格子の隙間があるため、気密性の確保が難しいこと。冷暖房効率が落ちたり、音の漏れが気になったりする場合があります。冷暖房の効きをよくしたい場合は、ガラスやアクリルが貼られた格子戸も検討するとよいでしょう。伝統的な格子戸の美しさを取り入れながら、現代の住まいに必要な気密性や断熱性が確保できます。
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詳しくはこちら>>最後に、グローバルベイスが手がけたリノベーション事例を見ていきましょう。いずれも格子戸の魅力をうまく活かした事例となっているので、ぜひ住まいづくりの参考にしてください。
旅館をイメージしながら計画したマンションのリノベーション事例です。リビングから和室へとつながる入口に竪格子戸を採用しました。シンプルな格子戸が、和モダンな空間のアクセントとして威力を発揮しています。
格子戸のおかげで、和室にいてもリビングにいる家族の存在がほどよく感じられる空間に。和室とリビングの間には入り口を二つ設けた回遊動線になっています。縁側をイメージして、和室の一部を板張りにしたのもポイントです。
アイアン格子の室内戸が印象的な、都内のセカンドハウスのリノベーション事例です。LDKの一角を緩やかに仕切り、ワークスペースとしました。同じ格子のデザインでも、アイアンやガラスなどの現代的な素材を使うことで、モダンな印象が増します。
ベッドルームの一角にもアイアン格子を使用し、ウォークインクローゼットをつくりました。収納内がベッド側から見えて、とてもおしゃれです。
最後にご紹介するのは、格子のデザインを建具ではなくキッチンカウンターに取り入れたリノベーション事例です。縦格子のデザインがリビング側から見え、和モダンテイストのホテルのようなラグジュアリー感のある空間になりました。木の格子と、黒い天井や壁のコントラストがとてもおしゃれです。
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詳しくはこちら>>格子戸は日本の伝統的な建具でありながら、現代の住まいにも幅広く活用できる魅力的な建築要素です。デザイン性、採光性、通気性などの利点を活かしつつ、気密性やメンテナンス性といった課題にも適切に対応することで、快適でおしゃれな空間づくりに役立ちます。リノベーションや新築の際には、格子戸の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
グローバルベイスでは、格子戸を含む伝統的な日本建築の要素を活かしたリノベーションのご相談も承っております。経験豊富な専門スタッフが、お客様のご要望に合わせた最適な提案をいたします。和モダンな空間づくりや、格子戸を用いた機能的なデザインなど、幅広いニーズにお応えしますので、お気軽にお問い合わせください。