マイホームを購入する計画があるなら、物件選びの前にまず「いくらまでの物件なら買えるか」という購入予算を決める必要があります。購入予算を決めるためには、考慮すべき費用や無理なく返済できる住宅ローン借入額といったキーポイントをおさえることが重要です。ここでは、住宅購入時・購入後に必要な費用や、返済できる金額からみた住宅ローン借入額の計算方法など、返済に無理のない購入予算の決め方を詳しく解説します。
CONTENTS
家を購入する際に必要な資金は物件購入代金だけではありません。ほかにも、売買手続きの費用や住宅ローン借入れ費用からなる「諸費用」がかかります。これらの諸費用は物件価格の3%~10%かかるのが一般的。さらに、引越し料金や家具類の購入代金などの「入居費用」も必要です。家の購入時・入居時に必要な費用は次のように大きく3つに分類されます。
1.物件購入代金
2.諸費用
2-1.売買手続きにかかる費用(売買契約書の印紙代、不動産会社への仲介手数料、登記費用、司法書士への報酬、固定資産税・都市計画税・管理費・修繕積立金の清算金、不動産取得税など)
2-2.住宅ローン借入れにかかる費用(ローン契約書の印紙税、ローン事務手数料、保証会社に支払う保証料、団体信用生命保険料、火災保険料など)
3.入居費用(引越し料金、家具購入代金など)
なお、金融機関によって、物件購入資金のみを貸してくれる住宅ローン、諸費用込みの資金を貸してくれる住宅ローンなど、いろいろあります。住宅の購入予算は、住宅購入時にどれだけ自己資金を用意できるかと住宅ローンでいくら借りるかによって決まってきます。
住宅の購入予算 = 自己資金 + 住宅ローン借入額 |
<住宅購入時・入居時の費用と住宅ローン>
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詳しくはこちら>>住宅の購入予算は、住宅を購入する際の自己資金と住宅ローン借入額からなります。それでは、住宅購入時の自己資金額の決め方からご説明します。
家を買おうとする際には、のちの住宅ローン返済を考えて、できるだけ頭金を多くして住宅ローンの借入額を少なくしようとする心理が働きがちです。しかし、貯金額すべてを住宅購入時の自己資金にまわしてはいけません。
貯蓄すべてを住宅購入資金にしてしまうと、まず新居への入居費用が出せなくなってしまいます。また、近い将来必要となる車の購入資金や当面の子どもの教育費といった「使用目的が決まっている将来の資金」を取っておかなくてはなりません。そのほかに、病気やケガなどの万が一の時に備えて「予備費」も持っておくべきです。つまり、住宅購入時の自己資金にできる金額は、貯蓄額から、「入居費用+使用目的が決まっている資金+予備費」を差し引いた金額となります。
住宅購入時の自己資金 = 貯蓄額 -(入居費用 + 使用目的が決まっている資金 + 予備費) |
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詳しくはこちら>>住宅購入時に借りる住宅ローンの金額は、自分が無理なく払える「毎月返済額(+ボーナス時返済額)」をもとに計算すれば求められます。では具体的な計算方法を見ていきましょう。
マイホームの購入を考えている家庭なら、現在住んでいる住宅の家賃のほかに、マイホーム購入資金を積み立てていることでしょう。すると、現在の住居費(家賃+住宅購入用積立金)から、住宅購入後の維持費(メンテナンス費用+固定資産税など)を差し引いた金額が、無理なく払える「毎月返済額」の目安です。
なお、住宅購入後の維持費には以下の費用があげられます。
それでは実際に毎月返済額を計算してみましょう。
<毎月返済額の計算例>
毎月返済額=10万円+5万円-3万円=12万円
次に、この毎月返済額をもとに住宅ローンの借入額を計算します。
<住宅ローン借入額の計算例>
(元利均等払い。計算を簡単にするために「ボーナス時加算額はなし」とします)
(現在は史上最低と言われるほど金利が低くなっていて、変動金利であれば固定金利よりも低い金利で借り入れを起こすことが可能であり、実際にローンを組む方の過半数は変動金利を利用されていますが、今回のシミュレーションでは金利が高く、借入可能額も低くなる固定金利を採用しています。)
返済期間 | 住宅ローン借入額 | 毎月返済額 | 年間返済額 | 総返済額 |
20年 | 約2,487万円 | 12万円 | 144万円 | 約2,880万円 |
25年 | 約3,000万円 | 約3,600万円 | ||
30年 | 約3,477万円 | 約4,320万円 | ||
35年 | 約3,919万円 | 約5,040万円 |
住宅ローンの返済期間は最長でも35年のため、この例では最大約3,919万円を住宅ローンで借りられることになります。
住宅ローンの毎月返済額 = 現在の住居費(家賃+住宅購入資金積立) ― 住宅購入後の維持費(メンテナンス費用+固定資産税など) |
上の表の試算ではボーナス時返済額は計算に入れてありませんが、実際の住宅ローンの返済計画にボーナス時の追加返済額を計算に入れてもかまいません。ただし、ボーナス時返済に頼りきった返済額の計算は禁物です。なぜから、ボーナスは会社の業績が悪ければ減らされたりゼロになったりする可能性がある収入だからです。景気が悪くなり、ボーナスが減らされてもゼロになっても持ちこたえられる返済額を考えましょう。
一般に「住宅ローンの返済負担率は25%以内が目安」といわれています。返済負担率とは年収に占める年間返済額の割合のことです。この目安をもとに年収に応じた毎月返済額を試算してみましょう。
<返済負担率を25%とした毎月返済額の計算例>
年収 | 年間返済額 | 毎月返済額 | 住宅ローン借入額 | 総返済額 |
400万円 | 100万円 | 約8.3万円 | 約2,722万円 | 約3,500万円 |
600万円 | 150万円 | 約12.5万円 | 約4,082万円 | 約5,250万円 |
800万円 | 200万円 | 約16.7万円 | 約5,443万円 | 約7,000万円 |
1,000万円 | 250万円 | 約20.8万円 | 約6,804万円 | 約8,750万円 |
住宅ローン金利年1.5%(全期間固定金利)、返済期間35年、ボーナス時加算額はなし、元利均等払いの場合。
家庭によっては「25%でも返済負担が重い」というケースもありますし、「25%なんて余裕」というケースもあるでしょう。「返済負担率25%以内」は、あくまでも無理のない返済になっているかをチェックするための一般的な目安です。実際には個々の経済状況に応じて、無理がない返済額を決めていきましょう。
実際に、住宅ローンの申込む際に注意すべきポイントは、「金融機関が考える融資可能額」=「借り手が考える無理のない返済可能額」ではないということです。
銀行などの金融機関は住宅ローンの審査をする際、担保となる住宅(土地・建物)の評価額や返済負担率、そのほかの審査項目にもとづいて審査を行います。住宅の評価額や返済負担率、そのほかの審査項目に問題がない場合は住宅ローンの審査に通り、問題がある場合は審査に通りません。ただし、問題があるのが返済負担率だけの場合は、金融機関が基準としている返済負担率まで減額して融資となる場合があります。
住宅ローンの審査項目や基準となる返済負担率は、金融機関によって異なり、しかも公開されていません。ただし、住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)の「フラット35」は返済負担率の基準を以下のように定めて公表しています。
<「フラット35」(住宅金融支援機構)の返済負担率基準>
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
基準 | 30%以下 | 35%以下 |
つまり、「フラット35」は、年収400万円未満の場合は返済負担率30%まで、年収400万円以上の場合は返済負担率35%まで融資可能だと考えていることになります。ほかの金融機関も、多少%の違いはあるものの、ほぼ同様のレベルとみなしていいでしょう。
例えば、金融機関の公式サイトを見ると、住宅ローンの説明ページに「年収から計算した融資可能額の目安」というシミュレーション画面がよくあります。実際に数字を入れて計算してみると、返済負担率はおおむね30%台前半の設定になっていることがわかるでしょう。
したがって、「金融機関が融資可能と考える返済負担率」は「無理のない返済負担率の目安:25%以内」を上回っていることになります。その結果、金融機関が借り手の考える無理のない返済額を超えて融資を行うケースが少なくありません。すると
「金融機関が考える融資可能額」>「借り手が考える無理のない返済可能額」
というオーバーローン状態に陥りやすくなります。
金融機関は「借り手はマイホームのためにがんばって返済するだろう」という観点で融資可能額を決定します。実際に、マイホームという生活拠点がかかっているローンの借り手は、長期間にわたって懸命にローンを返済しようとするでしょう。この「がんばって」「懸命に」の部分は借り手にとって負担になっていることが多いのです。
「返済負担率25%以内が目安」の説明のところで「25%でも返済負担が重い」と思った方は、「金融機関が返済負担率35%まで貸してくれるといってもさらに返済負担が重くなるだけ」と感じることでしょう。その場合は、金融機関がすすめるままに融資可能額までローンを借りてしまうとあとで返済不能になる可能性が高くなります。逆に、「返済負担率25%なんて余裕」と思った方は、返済負担率25%を超えて、家計に無理のない範囲まで借入れ可能です。
以上のように、返済負担率の解釈の違いから、金融機関が考えている「融資可能額」が借り手の考える「無理のない返済可能額」よりも多くなることがあります。金融機関が「〇〇〇〇万円まで融資可能」といってきてもあくまでも参考程度にとどめて、自分の場合いくらまでが無理なく返済できる金額かを考えるようにしましょう。
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詳しくはこちら>>では、実際に会社員Aさん(35歳・男性)のケースで住宅の購入予算を計算してみましょう。
<会社員Aさん(35歳・男性)のケース>
Aさんは子どもの誕生を機会に、現在の賃貸マンションよりも広い中古マンションを購入することにしました。妻も会社員で共働きですが、出産後の今は育児休業中です。万が一子どもを入園させる保育園が見つからない場合は、会社を辞めることも考えています。
■Aさんが住宅購入費用にまわせる自己資金
=貯蓄額850万円-(予備費300万円+入居費用50万円)=500万円 ■Aさんの毎月返済額 =(家賃12万円+住宅購入用積立金3万円)-購入後維持費3万円=12万円 ※ 年収に対する返済負担率:(12万円×12か月)÷年収600万円=24%(25%以内) ■Aさんの住宅ローン借入額 =毎月返済額12万円・金利年1.5%・返済期間30年 → 約3,477万円 ※ この計算は複雑なので、毎月返済額をもとに借入可能額を計算できるシミュレーション画面をインターネット上で探すことをおすすめします。 ■Aさんの住宅購入予算 =自己資金500万円+住宅ローン借入額約3,477万円=約3,977万円 |
Aさんの住宅購入予算は約3,977万円です。ただし、この金額は諸費用込みの金額なので、諸費用が物件価格の6%かかるとすると、物件価格ベースでの購入予算は約3,752万円となります。
<計算式>
■諸費用を除いた物件価格ベースでの購入予算
=諸費用込みの購入予算約3,977万円÷(1+0.06)=約3,752万円
(諸費用約225万円)
Aさんの住宅購入予算は約3,977万円です。ただし、この金額は諸費用込みの金額なので、諸費用が物件価格の6%かかるとすると、物件価格ベースでの購入予算は約3,752万円となります。
Aさんの収入で計算した返済負担率は一応目安の25%以内なので特に問題はないでしょう。妻が育児休業後、無事職場に復帰できれば家計はかなり楽になり、繰り上げ返済も可能になります。
実際に物件の内覧に行くと、不動産会社の営業担当者が物件価格をもとに、提携の住宅ローンを利用した場合の返済計画を熱心に試算してくれます。しかしその試算はあくまでも売り手目線の返済プランです。よく見ると、ボーナス返済に頼って毎月返済額を低く見せた返済プランになっていませんか。営業担当者が提示した返済プランを見て「自分たちにも買えそう」と納得していてはいけません。物件を見に行く前に、まずは自分の頭で返済に無理のない購入予算を計算することが大切です。
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詳しくはこちら>>以上のように、家の購入予算は、必要になる費用や返済可能な金額をもとに、順序立てて計算することができます。購入予算の見当がつくと、物件も的をしぼって探すことでき効率的です。「マイホームを購入したい」と思ったら、物件選びの前に家の購入予算を計算することから始めましょう。
また、この記事をご覧いただき「自分の場合はどうなるんだろう」とお思いになった方は「こちら」のセミナーがおすすめです。失敗しない住宅購入のために、資金計画から、物件探しのポイントまでお伝えいたします。