住まい選びを変える 中古マンション×リノベーション

老後・定年後にマンションを買うメリット・デメリット

「持ち家(マイホーム)を購入するべきか、それとも賃貸住宅に住み続けるべきか」いつの時代も議論が絶えないテーマといえます。
長寿命化が進行する近年では、現役時代は賃貸住まいでも、老後を見据えて定年後に住宅を購入する人も増えているようです。
この記事では、定年後にマンションを購入するメリット・デメリットや、賃貸住宅に住む場合とのコスト比較をご紹介します。

こんな方におすすめの記事です
  • 老後に持ち家か賃貸か迷っている方
  • 定年後の住宅購入を検討している方
  • 老後資金に備える方法を知りたい方
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■老後の住まいは賃貸・購入どちらが良い?

住宅金融支援機構の調査によると、2017年度に住宅ローンのフラット35を利用した人のうち、最も多かったのは30歳代の42.9%、ついで40歳代の25.1%でした。30・40歳代の合計で全体の68.0%となり、住宅を購入した人の多くを働き盛りの現役世代が占めていることがわかります。

・60歳以上の住宅購入も増えている

いっぽう、定年世代になってから住宅を購入する人の割合も徐々に増加傾向です。同調査によると、60歳以上の利用者は2007年には3.1%でしたが、年々増減しながらもゆるやかに構成比が上昇し、2017年には7.0%と10年で2倍以上となっています。

参考:https://www.jhf.go.jp/files/400346708.pdf

それでは、定年後に住宅を購入する場合と、老後も賃貸住宅に住む場合では、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

■老後も賃貸に住み続けるメリット

まずは、老後も賃貸住宅に住むメリットを確認してみましょう。

・住み替えの自由度が高い

賃貸住宅の大きなメリットといえば、住み替えの自由度が高いことでしょう。ライフスタイルの変化に応じて、好みの立地条件や間取りの住まいで新生活を開始することができます。年齢とともに持ち物を減らして、コンパクトな間取りの住宅に住み替えることも可能です。家賃の安い住まいに引っ越せば、毎月の住居費用を抑えることもできます。

持ち家の場合、住み替えを考える際は売却するか・賃貸に出すかと検討することになります。思い通りに売却できるとも限りませんから、いつでも気軽に引っ越すのは難しいでしょう。また、持ち家を購入すれば固定資産税を毎年支払うことになりますが、賃貸住宅であれば不要です。

■老後も賃貸に住み続けるデメリット

つぎに、定年後も賃貸住宅に住むデメリットとリスクを解説していきます。

・一生家賃を支払う必要がある

賃貸住宅に住む限り、家賃を払い続ける必要があります。

近年は医学の進歩・食生活の変化・住環境の改善などから、年々平均寿命が伸びているため、老後期間が長くなる傾向にあります。厚生労働省発表の日本人の平均寿命は、平成17年には男性78.56歳、女性85.52歳でしたが12年後の平成29年には男性81.09歳、女性87.26歳となっています。この傾向は今後も続くと予測されており、2050年には女性の平均寿命が90歳を超える見込みだそうです。

賃貸住宅に住み続ければ、長生きするほど生涯に支払う家賃も大きくなります。当然ながら誰しも自分がいつまで生きるのかは分かりませんから、生涯に必要な住居費用を正確に予測するのは不可能です。

参考:
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/dl/life17-02.pdf
https://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/24forum/pdf/tokyo-s3-2.pdf

・年齢を理由に入居を断られる可能性がある

高齢者が賃貸住宅に入居する場合、希望する物件に住めるとは限らないという問題があります。

賃貸住宅には審査があり、貸主(大家さん)は入居者を選ぶことができるからです。老後の十分な資産や収入源があり経済面に問題がなさそうでも、高齢者はその年齢を理由に断られる可能性があります。特に独身の高齢者は、孤独死のリスクが高いとして敬遠されやすいのです。

少子化高齢化により人口が減少し空き家が増加傾向にあるため、今後の賃貸住宅は借り手市場になるという意見もあります。もちろん入居希望者が少ない物件であれば、高齢者でも借りやすいかもしれません。しかしながら、立地条件や設備が良く誰もが入居したいと思うような人気物件であれば、やはり高齢がネックになる可能性は高くなるでしょう。

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■定年後にマンションを購入するメリット

それでは、定年後にマンションを購入するメリットを確認していきましょう。

・老後に合わせた住まいを選べる

働き盛りの年代に住宅を購入する人が多いですが、定年後に購入することで得られるメリットもあります。現役世代と老後世代では、ライフスタイルが大きく異なっているもの。定年後にマンション購入する場合、予算に合わせて老後に暮らしやすい住まいを選ぶことができます。

◇居住エリアの選択肢が多い

現役時代は、勤務先からの距離や通勤のしやすさ、子どもの教育環境などが居住エリアを選ぶ大きな要素となるもの。定年後であればそれらにとらわれず、住みたい場所を柔軟に選ぶことができます。

◇コンパクトで効率の良い住まいが選べる

若いうちは広い住まいに憧れる傾向がありますが、年齢とともに不要になった持ち物を減らし、コンパクトな間取りへの住み替えを希望する人も増えます。床面積の小さな住宅を選べば購入費用を抑えられるほか、掃除がしやすい・光熱費が安いというメリットもあります。

また、年齢とともに階段の上り下りが負担になるものです。それまで一戸建てに住んでいたけれど、老後は一層のフロアで生活が完結できるようマンションに住み替えるケースも多く聞かれます。

◇高齢者が暮らしやすい住環境

定年後のマンション購入であれば、高齢者暮らしやすい住環境の物件を選ぶことができます。例えば、若い頃は病気知らずの人でも、高齢になると病院へ行く機会が増えるものです。徒歩圏内に商業施設や公共施設が充実したエリアであれば、車がなくても通院や買い物ができます。

・終の棲家という安心感が得られる

老後は安定した暮らしを希望する人が多いもの。持ち家という「終の棲家」を手に入れることで、ここにずっと暮らせるという精神的な安心感を得ることができます。「賃貸住宅のデメリット」の項目で解説したような、入居拒否の心配をする必要もなくなります。

・自由にリフォームできる

賃貸住宅では、住まいに不便を感じても思い通りにリフォームすることはできません。持ち家を購入すれば、老後に安心して暮らせるようにバリアフリー化することが可能です。また、バリアフリーリフォームの内容が所定の要件を満たしていれば、所得税や固定資産税の軽減措置を受けることができます(税務署や市区町村への申告が必要)。

◇バリアフリーリフォームの一例

・床や廊下の段差の解消や、手すりを設置により転倒を防ぐ
・床暖房の導入や、2重窓の導入により断熱性能を向上させてヒートショック症候群(大きな温度差による心筋梗塞や脳梗塞)を防ぐ。
・ドアや窓に掴みやすい大きめのハンドルを設置して開閉しやすくする。
・体の前後の動きが必要な開き戸から、車椅子でも開閉しやすい引き戸に変える。

参考:http://www.j-reform.com/zeisei/pdf/zeisei30_2-bf.pdf

■定年後にマンションを購入するデメリット

定年後にマンションを購入するデメリットやリスクも知っておきましょう。

・まとまった自己資金が必要

そもそも定年後に住宅ローンを組むことは可能なのでしょうか?

住宅ローンの年齢制限は金融機関ごとに異なりますが、住宅金融支援機構の提供するフラット35では、申込時の年齢が70歳未満で、80歳までに完済するものと定められています。ほかの金融機関の場合でも、類似した条件です。つまり、定年後にローンを組むことは不可能ではないのです。

しかしながら定年後は現役時代のように継続的な給与収入が見込めないため、審査条件は厳しくなるでしょう。また、一般的に住宅ローンの返済期間は35年ほどに設定されますが、定年後に融資を受ける場合は返済期間が短くなるため、まとまった自己資金の用意が必要です。

参考:
https://www.flat35.com/faq/faq_201-1.html
https://www.flat35.com/loan/atoz/05.html

・住み替えの自由度が低くなる

定年後に住宅を購入すると、賃貸住宅のように手軽に住み替えることができなくなります。ただし老後は、現役時代に比べてライフスタイルが変化する要素は大幅に減るため、老人ホームに入居する場合などを除き、住み替えが必要になる理由はあまりないといえるのではないでしょうか。

■老後資金に備える方法

老後の預貯金に不安がでてきたとき、持ち家があればまとまった生活資金を増やせるかもしれません。たとえば持ち家の売却、リバースモーゲージ、リースバック等の方法です。

・持ち家の売却

思い切って持ち家を売却して、今よりもコンパクトな住まいに引っ越すことで、まとまった現金が確保できます。また持ち家を賃貸にだし、収入を得るのも一つの手です。ただし売却や賃貸にだすと、新しい家へ引っ越す出費や手間がかかるというデメリットがあります。高齢者向けの施設へ移りたい場合などに適した方法といえるでしょう。

・リバースモーゲージ

住み慣れた自宅を手放したくない場合、持ち家を担保にして融資を受ける「リバースモーゲージ」という方法も。今までと変わらず自宅に住み続けられるのがメリットです。毎月の借入金の返済は利息分のみで、契約者が亡くなった際に自宅を売却して元金を一括返済できます。

・リースバック

同じく住まいを変えたくない場合の選択肢の一つがリースバックです。自宅を一度売却し、そのまま買主から賃貸住宅として貸してもらいます。自宅の売却でまとまった資金が得られるうえ、そのまま元の家に住み続けられるのがメリットです。一定期間内に買い戻せる特約をつける場合もあります。

■定年後の住宅購入と賃貸住宅のコスト比較

定年後にマンションを購入する場合と、賃貸住宅に住む場合のコストを比較しましょう。老後期間を30年と仮定して、おおまかに試算してみます。

・定年後にマンションを購入する場合

2LDK中古マンションを購入して、バリアフリーリフォームを想定。物件購入時の諸費用は省略しています。

・中古マンション1,500万円+リノベ費用700万円(一括購入)
・固定資産税:7万円/年
・管理費・修繕積立金:1.5万円/月

a. 住宅購入+リノベ費用 2,200万円
b. 固定資産税30年分=210万円
c. 管理費・修繕積立金30年分=540万円

a.b.c合計=2,950万円

・定年後も賃貸に住み続ける場合

定年後の老後期間30年、賃貸住宅に住む2通りのケースを想定。いずれも敷金・礼金、引越し費用等は省略しています。

●ケース1
2LDKの賃貸住宅に30年住む場合。


2LDKの賃貸住宅に30年住む場合。

・家賃:9万円/月
・管理費・修繕積立金:1.5万/月
・更新料:家賃1か月分9万円/2年

a. 家賃+管理費30年分=3,780万円
b. 更新料14回=126万円

a.b.合計=3,906万円

●ケース2
家賃10万円の2LDK物件に住み、10年後(更新5回目のタイミング)に家賃7万円の1LDKに住み替える場合。

・家賃:10万円/月
・管理費・修繕積立金:1.5万円/月
・更新料:家賃1か月分10万円/2年

a. 家賃+管理費10年分=1,380万円
b. 更新料4回=40万円

家賃:7万円/月
管理費・修繕積立金:1.2万円/月
更新料:家賃1か月分7万円/2年ごと

c. 家賃+管理費20年分=1,968万円
d. 更新料9回分=63万円

a.b.c.d.合計3,451万円

以上の試算から、老後を30年と仮定した場合、定年後にマンションを購入したほうがコストは低くなることがわかりました。

■まとめ

老後・定年後にマンションを購入するメリット・デメリットとコスト比較をご紹介しました。現役世代はライフスタイルが大きく変化することも多く、身軽に住み替えしやすい賃貸住宅を選ぶ人も多いです。しかし近年は長寿命化が進んでおり、今後も老後の期間が長くなっていくと考えられます。今は賃貸住宅に住んでいる人でも、定年後に住宅を購入することも選択肢のひとつに加えておくと良いのではないでしょうか?

編集者: マイリノジャーナル編集部
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