家族や親族が亡くなったとき、遺された不動産はどのように継承すればよいのでしょうか?不動産相続に必要な手続きと、おおまかな流れを確認しておきましょう。そのほか、必要な費用や税金の計算方法、注意点について解説しています。
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不動産相続に必要となるおもな手続きを順に並べると、下記の通りとなります。
・死亡届の提出
・年金・保険等への届出
・遺言書の有無の確認
・法定相続人の調査・確認
・相続財産の調査
・遺産分割協議
・財産継承方法の選択
・相続財産の名義変更
・相続税の申告・納付
各手続きの注意点や期限を解説していきます。
同居人や親族が死亡したとき、その事実を知った日から7日以内に死亡届の提出が必要です。同居人や親族のほか、家主や管理人、後見人なども届人になることができます。
届出先は亡くなった人の本籍地か死亡地、または届人が住む市区町村の役場窓口です。届出用紙は窓口で入手することができ、死亡診断書または死体検案書を添付する必要があります。何らかの理由で死亡を証明する書面が用意できない場合は、窓口で相談しましょう。死亡届の提出に手数料は掛かりません。
期限:亡くなったことを知った日から7日以内、国外で亡くなった場合はその事実を知った日から3ヶ月以内
亡くなった人が年金を受給していた場合、年金事務所や年金相談センターに出向き、「受給権者死亡届(報告書)」を提出する必要があります。添付書類は、(1)亡くなった人の年金証書(2)死亡を証明できる書類(戸籍抄本、死亡届の記載事項証明書または市区町村に提出した死亡診断書のコピー)です。
なお、マイナンバーが日本年金機構に登録されている場合は、受給権者死亡届の提出を省略することができます。
期限:厚生年金の場合は死亡後10日以内、国民年金の場合は死亡後14日以内
亡くなった人が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している場合、市区町村役場の窓口に喪失届の提出と、保険証の返還が必要です。亡くなった人が世帯主の場合は世帯主変更を行い、家族の健康保険証を新たに発行することになります。
また、葬祭費の申請をすることで、告別式や埋葬にかかった費用の一部を受け取ることができます。葬祭費の金額は自治体により異なりますが、3〜7万円ほどのことが多いようです。
亡くなった人が会社員で国民健康保険以外の保険に加入している場合、勤務先に連絡しましょう。各種手続きはおもに勤務先がしてくれます。健康保険の場合と同様に「埋葬料」の支給を受けることができますが、加入していた健康保険の種類によって支給内容は異なります。
民間の生命保険に加入していた場合、まずは保険会社に連絡しましょう。請求書と必要書類の案内が送られてきます。必要書類は保険会社ごとに異なりますが、おもに「死亡診断書・死体検案書」「被保険者(亡くなった人)の住民票」「受取人の印鑑証明」などです。期限は保険の約款により異なりますが、できるだけ速やかに申請しましょう。
期限:亡くなった日から14日以内(国民健康保険)、亡くなった日から5日以内(社会保険)、葬儀から2年以内(葬祭費申請)
遺言書を遺しているかどうかの確認が必要です。遺言書には「公正証書遺言書」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。期限は定められていませんが、確認が済まないと相続手続きが進みません。
公正証書遺言書は、公証人が作成し、公証役場に保管されている遺言書です。相続人が照会請求をすれば、有無を確認することができます。法的効力があり、検認を受けずに相続手続きに進むことができます。なお、公正証書遺言書が存在していても、遺言者が亡くなる前に確認することはできません。
自筆証書遺言は、遺言者本人が作成した遺言書です。自己保管している場合と、法務局に保管している場合があります。
自己保管とは、自宅の金庫や銀行の貸し金庫などに保管しているケースです。自筆遺言書を見つけた場合、検認手続きの前に開封してはならないことになっています。検認とは、家庭裁判所に申立てを行い、その遺言書が偽造や変造されたものでないかを明確にしてもらうものです。
自筆遺言書が法務局に保管されているケースもあります。法務局保管の遺言書があるかどうかを確認するには、管轄の法務局の「遺言保管書」で遺言書情報証明証の交付を請求しましょう。法務局で保管された自筆証書遺言の検認手続は不要です。
秘密証書遺言は、遺言書を自分で作成し、その存在のみを公証役場で証明できる遺言です。公証役場に問い合わせ「遺言書の有無」だけを確認することができ、有るということが分かれば自宅や貸し金庫などを探すことになります。秘密証書遺言は家庭裁判所の検認手続きが必要です。法改正によりメリットがほとんどなくなったため、秘密証書遺言を選ぶ人は少なくなっています。
期限:1ヶ月を目安として、できるだけ速やかに
相続で遺産を受け継ぐ権利を持つ人を法定相続人といい、相続の割合や優先順位が決まっています。法定相続人は、故人の配偶者および血族(養子縁組を含む)です。相続手続きの準備として、被相続人(故人)が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本を集めて、誰が法定相続人なのかを確認する必要があります。法定相続人をしっかりと把握しないまま手続きを進めると、トラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。現在の家族が知らない血縁者が実は存在した、というケースもあります。
期限:1ヶ月を目安として、できるだけ速やかに
亡くなった人にどれだけの資産があるのかを調査し、把握します。ほかの親族が相続財産を隠している、同居家族による使い込みが予想されるといった場合は、専門家への調査依頼を検討しても良いかもしれません。財産の種類はおもに不動産(土地・建物)、預貯金、証券(株式・投資信託等)の3種類。また、プラスの資産だけでなく、マイナスの資産(負債・借金)も含まれます。
期限:1ヶ月を目安として、できるだけ速やかに
遺産分割協議は、法定相続人でどのように遺産を分けるかを話し合って決めること。法定相続人が1人の場合は不要です。相続財産に不動産が含まれる場合、預貯金のように分けることができないため、下記いずれかの方法を選ぶことになります。
相続財産を現物のまま分ける方法です。例えば相続人が3人いる場合、1人が土地、1人が建物、1人が現金と、分けて相続します。
不動産を売却して現金化し、相続人で分ける方法です。
1人が不動産を相続し、その分ほかの相続人に金銭を支払います。例えば親と同居していた長男が持ち家を相続し、2,000万円を兄弟に支払う、といった方法です。
不動産の名義を、相続人全員の共有名義にする方法です。
期限:相続登記の前
相続財産には、不動産や預貯金などのプラスの財産と、借金(住宅ローン、クレジットなど)によるマイナスの財産があります。そこで財産を継承する方法として、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択することができます。
プラスの財産もマイナスの財産も合わせて相続する方法です。相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きをしなければ、自動的に単純承認したことになります。
限定承認は、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。相続開始を知った日から3ヶ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申立を行う必要があります。限定承認の手続きは非常に複雑で期限も短いため、ほとんど利用されていないのが実情です。
相続権を放棄して相続財産を受け取らない方法です。相続放棄を選択するとはじめから相続人ではなかったことになり、相続手続きを一切行わなくてよくなります。相続放棄は財産全体に対して行うため、例えばプラスの資産は相続してマイナスの資産のみ相続放棄する、ということはできません。相続放棄を選択するには、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。
期限:相続開始を知ってから3ヶ月以内(家庭裁判所に申請することで延長可)
相続財産の名義を、相続人の名義に変更します。不動産に関しては、法務局で相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)をします。相続登記に必要な書類は相続の種類や内容(遺産分割協議書や遺言書の有無など)により異なりますが、おもなものは下記のとおりです。
◆被相続人(故人)の戸籍、住民票の除票
◆相続人全員の戸籍謄本
◆不動産を相続する人の住民票
◆不動産の固定資産税評価証明書
◆遺産分割協議書、遺言書
◆印鑑証明書
相続登記の名義変更はこれまで義務ではなく、期限も定められていませんでした。しかし、空き家トラブルなどの社会問題化により2024年より相続登記が義務化される見通しとなっています。3年以内に登記をせずに放置していると、過料10万円以下の罰則もあります。
期限:特になし(2024年より義務化、期限3年以内の見通し)
相続税の申告書を作成し、相続開始から10ヶ月内に管轄の税務署に提出します。相続税の納付期限も同じ期日となりますが、申告書の提出と納税を同じ日にする必要はありません。税務署や金融機関の窓口での納付のほか、「国税クレジットカードお支払いサイト」にアクセスしてカード払いすることもできます。税務署で発行されたバーコード付き納付書があれば、コンビニで支払うことも可能です(納付額30万円まで)。
期限:相続開始から10ヶ月以内
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詳しくはこちら>>不動産相続の際に必要となる費用や税金は下記の通りです。
・未納の固定資産税
・手続きに必要な書類の取得費用
・相続登記の際の登録免許税
・司法書士への報酬
・相続税
各手続きの注意点や期限を解説していきます。
固定資産税は、毎年1月1日の時点で不動産を所有する人に課税される税金です。所在地によっては都市計画税の支払いもあります。被相続人が亡くなった時点でその年の固定資産税をすべて納付済みなら特に問題はありません。
固定資産税の支払いは年4回に分割されるため、相続開始時に一部が未納の場合もあります。相続手続きが終わってから…と放置しておくと延滞金が掛かる可能性もあるため、相続人のうち誰かが便宜上の代表者となり、とりあえず納付しておくと良いでしょう。遺産分割および相続手続きが終わったら、不動産を相続した人が精算するのが一般的です。翌年以降は、不動産の新しい所有者が固定資産税を納めていくことになります。
被相続人および相続人の戸籍謄本や住民票の取得費用として、一通あたり300〜750円の費用が掛かります。
法務局で不動産の相続登記(名義変更)をする際、登録免許税が掛かります。相続を原因とした所有権移転の登録免許税率は【固定資産税評価額×0.4%】です。
相続登記を自分で行うこともできますが、専門家(司法書士)へ依頼することが多いです。その場合は必要書類の取得費用といった実費のほかに、報酬を支払うことになります。報酬額は司法書士事務所により異なりますが、相続1件あたり5〜15万円程度が相場のようです。不動産が高額、相続人の確定が難しい、権利関係が複雑といったケースの場合は、さらに高くなることもあります。
預貯金についてはそのままの価額、不動産については相続税評価額に対して相続税が課税されます。相続税の基礎控除額は【3,000万円+600万円×(法定相続人の数)】です。これよりも相続財産が多い場合、超えた部分が相続税の課税対象となります。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | — |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円以上 | 55% | 7,200万円 |
出典:No.4155 相続税の税率|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
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詳しくはこちら>>土地の相続は、家屋が建っている場合に比べてシンプルで考えやすくなります。例えば、2筆に分けて現物分割することができ、売却もしやすいからです。
土地は周囲の開発などにより、大幅に高騰するケースがあることが特徴です。例えば相続人の1人が土地を相続し、ほかの相続人が土地の評価額と同程度の預貯金を相続したとします。もし相続した土地の価格が将来的に跳ね上がったとき、ほかの相続人に不公平感が生じる可能性があります。
土地を相続すると翌年から固定資産税を支払うことになります。家が建っていれば小規模住宅用地の特例として、課税標準額が固定資産税評価額の6分の1になりますが、更地の場合はこの軽減措置が受けられません。思っていたよりも固定資産税が高額で負担になるケースもあります。
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詳しくはこちら>>遺された戸建てに誰も住まない場合は、売却により換価分割することで公平に分けることができます。相続人の1人が被相続人(故人)と同居していてそのまま住み続けたいと希望する場合は、代償分割を選択することが多いです。
戸建ては土地+建物で構成されているため、共有分割にした場合、新たな相続が発生した時に権利が複雑化しやすくなります。
とりあえず戸建てを相続したものの誰も住まず、長期間荒れ放題になったまま放置していると、特定空き家に指定される可能性があります。特定時点に指定されると、通常受けられる超規模宅地の特例の対象外となり、固定資産税の軽減措置が受けられなくなります。
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マンションの場合も敷地の共有持分がありますが、実質的には建物と分けることができないため、将来的に「更地にして売却する」「家を建て替える」といった選択肢はないことを留意しておく必要があります。
マンションの場合、住宅ローンの返済が完了していても、毎月の管理費や修繕積立基金の支払いは続きます。誰も住む予定がない場合は、早めに賃貸に出すことを検討しても良いでしょう。
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自分の持ち家があり、相続したマンションに住んでいない。そんなケースでも、毎月の管理費や修繕積立金で出費がかさんでしまいます。グローバルベイスでは中古マンションの買取りも行っていますので、ご相談ください。
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