不動産(土地や建物など)を売却するとき、支払わなければならないのが「譲渡所得税」。取り扱う不動産の金額が大きいと、意外と大きな出費になります。
しかしマイホームの売却に関してはほとんどの場合、大きな税金を支払うことはありません。その理由は「3000万円の特別控除」の制度が設けられており、売却益から最大3000万円を控除できるからです。一定の要件はあるものの、多くの方が使える制度になっています。
今回はこの「3000万円特別控除」のしくみや計算方法など詳しく解説します。マイホームの住み替えや相続物件の売却などを検討中の方は参考にされてください。
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不動産を売って黒字が出ると、譲渡所得税の対象となります。このとき課税の対象となるのは、買主から受け取った金額そのままではありません。その不動産を購入したときの代金や、売買にかかった手数料や税金などは差し引くことができます。
課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額 収入金額:不動産を売るときに買い主から受け取る金額 取得費:不動産を買ったときの代金、手数料などの費用(建物は減価償却費相当額を差し引く) 譲渡費用:不動産を売るときにかかった仲介手数料や違約金などの費用 参考/国税庁|No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) |
そして一定の条件を満たすと、譲渡所得から特別控除額を差し引いて、支払う税金を大きく減らすこともできます。特別控除にはいくつか種類がありますが、そのなかの一つが「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」。簡単にいうと、マイホームの譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例です。
つまりマイホームを売ったときに出た利益が3000万円以内であれば、譲渡所得税を支払わなくてすむということ。この特例を適用できれば、かなり大きな節税になります。
3000万円特別控除を適用できるケースや要件について見ていきましょう。
<3000万円特別控除が使えるケースと要件> (1)自分が住んでいる家屋を売る (2)自分が住んでいる家屋+敷地・借地権を売る (3)自分が以前住んでいた家屋や敷地を売る ・住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る ・家屋を取り壊してから1年以内に敷地を売る(売却までの間、貸し駐車場などに使わない) |
また売却した年や前年、前々年に次のような特例を受けたことがある方は、3000万円特別控除の対象外となります。
<前々年までに受けていると対象外になる特例> ・マイホーム譲渡所得の3000万円特別控除の特例(相続した空き家の場合を除く) ・マイホーム譲渡損失の損益通算、繰越控除の特例 ・マイホームの買換え、マイホームの交換の特例 など |
その不動産を買う人が「親子・夫婦・生計を一にする親族・同居する親族・内縁関係にある人・特殊な関係のある法人」などの場合は、3000万円特別控除は受けられません。別荘や仮住まいも対象外なので気をつけましょう。
3000万円特別控除を受けるには、「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」という書類を記入して、確定申告をしなければなりません。確定申告のタイミングは、マイホームを売却した翌年の2月15日〜3月15日が原則です。
内訳書には不動産の概要(所在地や利用状況など)のほか、売却や購入の金額、そのときかかった手数料などを詳しく記入して、譲渡所得金額を計算します。記載例を参考にしながらご自身で必要項目を埋めることもできますが、知識がないと難しいので税理士に依頼するケースもあります。
書類は税務署でもらうほか、国税庁ホームページからダウンロードもできます。また確定申告書等作成コーナーで、案内画面にしたがって入力することも可能です。作成できた書類は印刷して税務署へ提出するか、電子申告(e-Tax)でデータを送信します。
また「売買契約前日の住民票の住所」がマイホーム所在地と異なる場合は、戸籍の附票の写しなど、その物件に住んでいたことを証明する書類も必要です。戸籍の附票は住民票の移り変わりを記録した書類で、本籍地の市区町村で写しを取得できます。
マイホームの売却と一口にいっても、相続した空き家や共有名義、賃貸や店舗併用などさまざまなケースが考えられます。どのようなケースで3000万円特別控除が適用できるのか、具体的に見ていきましょう。
通常の3000万円特別控除は、ご自身がマイホームとして使っていた住居に使える特例です。しかしそれとは別に「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」も用意されており、一定の要件にあてはまれば相続物件でも最大3000万円の控除が受けられます。
例えば父親が亡くなったときに相続した実家を売却したい場合などが対象です。相続前の用途が投資用マンションや別荘などの場合は、居住用家屋に該当しないため、こちらの特例は利用できません。その他にもさまざまな要件があるので、必ず確認しましょう。
<特例の適用要件> ・相続または遺贈により取得した居住用家屋やその敷地 ・相続から譲渡まで、事業や賃貸に使っていない ・譲渡時に一定の耐震基準を満たす ・相続開始日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却する ・売却代金が1億円以下 など |
3000万円特別控除は、基本的に自宅として使われている家屋やその敷地の売却を前提とした特例です。しかし古い住宅など、買主から「家屋を取り壊して土地のみを売ってほしい」と言われるケースもあるでしょう。
そのため3000万円特別控除は、家屋の取り壊しから1年以内に譲渡契約を結べば、更地にも適用できるしくみになっています。解体費用を譲渡費用として、譲渡所得から差し引くことも可能です。
ただし、家屋を取り壊したあと貸駐車場などに使っていた場合は、3000万円特別控除の対象外になるので気をつけましょう。
売却するマイホームが、夫婦や親子などで共有名義になっている場合もあるでしょう。
この場合は、各所有者の持ち分に対して、それぞれが最大3000万円の控除を使うことができます。例えば夫婦の共有名義なら、最大6000万円の控除枠があるということです。
1つの家屋のなかに、居住部分と店舗部分がいっしょになっている物件もあります。
その場合は、居住部分と店舗部分の割合を、床面積の割合で計算。居住部分のみに3000万円特別控除を適用できます。
ただし全体の90%以上を居住用として使っていた場合は、家屋全体が3000万円特別控除の対象です。
参考/国税庁|No.3452 店舗併用住宅を売ったときの特例
賃貸併用住宅の場合も、同じように本人が住んでいる部分のみ3000万円特別控除の対象になります。
例えば居住部分と賃貸部分の床面積がそれぞれ1/2であれば、譲渡益の半分に対して最大3000万円の控除が適用されます。
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詳しくはこちら>>マイホームを売却して、新しいマイホームを購入するケースもあるでしょう。新しい家を買うときに住宅ローンを組む予定なら、3000万円特別控除の利用には注意が必要です。
なぜなら3000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できないから。住宅ローン控除を適用するには、居住前2年〜居住後3年に3000万円特別控除を受けていないという要件があります。
<住宅ローン控除の適用要件> ・居住年およびその前2年の計3年間に譲渡所得の課税の特例を使っていないこと ・居住年の翌年以後3年以内に譲渡所得の課税の特例を使っていないこと 参考/国税庁|No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除) |
例えば2023年に新しい家に引っ越す場合、2021〜2026年に3000万円特別控除を使うと住宅ローン控除が適用できません。一方で3000万円特別控除の適用期間は「住まなくなってから3年経過した年の12月31日」なので、売却を遅らせたとしても併用不可です。
以前は「居住年と前後2年間に3000万円控除を受けていなければ住宅ローン控除の利用OK」だったので併用できましたが、2020年の税制改正で要件が変わったので注意しましょう。
マイホームを買い換えるなら、3000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらを利用した方がいいか、慎重に見極めなければなりません。
関連記事/住宅ローン控除とは?住民税控除も受けるにはどうすればいい?
売却益が大きい場合は、3000万円特別控除を受けた方がお得になります。例えば次のようなケースです。
売却するマイホーム(3000万円特別控除) | 新たに購入するマイホーム(住宅ローン控除) | ||
---|---|---|---|
譲渡益 | 3000万円 | 物件の種類 | 認定住宅 |
所有期間 | 5年超 | 借入限度額 | 5000万円 |
長期譲渡所得税 | 3000万円×20.315%=609万4500円 | 住宅ローン控除額 | 5000万円×0.7%×13年=455万円 |
節税効果 | 609万4500円 | 節税効果 | 最大455万円 |
譲渡益が3000万円でたとすると、長期所有の場合で約600万円の譲渡所得税がかかる計算です。3000万円特別控除を使うと、約600万円の節税効果があります。
一方、住宅ローン控除は年末ローン残高の0.7%がその年の所得税・住民税から控除されるしくみ。新築なら控除期間13年で、節税額は最大455万円です。(※2023年末までに入居した場合)
大きな売却益が出た場合や、住宅ローンの借入額が少ない場合は、3000万円特別控除を選んだ方がお得。また住宅ローンの借入期間や、新居の面積によっては住宅ローン控除の対象にならないケースもあるため、3000万円特別控除を検討しましょう。
なかには3000万円特別控除や住宅ローンを利用せずに「特定のマイホームを買い換えたときの特例」を使うケースもあります。これはマイホームを買い換えるときに、譲渡益にかかる税金を将来に繰り延べられる特例です。
売却するマイホームA | 新たに購入するマイホームB | ||
---|---|---|---|
購入金額 | 1000万円 | 購入金額 | 7000万円 |
売却額 | 5000万円 | 将来の売却額 | 8000万円 |
譲渡益 | 5000万円−1000万円=4000万円 | 将来の譲渡益 | 1000万円 |
例えば上記のような買い換えをおこなった場合、本来ならAの譲渡益4000万円に課税されます。しかし買い換え特例を適用すると、この4000万円は将来新居Bを譲渡するときまで繰り延べ。Aの譲渡益4000万円+Bの譲渡益1000万円の合計5000万円に対して課税されるということです。
これは非課税になるのではなく、あくまでも将来に先送りしただけ。もちろん長期的に考えて節税にならない可能性もありますが、当面の資金負担は抑えられます。
買い換え特例にも新旧住居に対してさまざまな適用要件があるため確認しましょう。なおこちらも住宅ローン控除との併用はできません。
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詳しくはこちら>>譲渡所得を計算するとき、その不動産を手に入れるのにかかった「取得費(購入代金や手数料など)」を差し引くことができます。不動産を相続で取得した場合は、そのとき支払った相続税額の一部を取得費に加算することも可能です。
注意したいのは、支払った相続税すべてを取得費に加算できるわけではないこと。次のような計算で、相続税のうち一部分を取得費に加えます。
加算できる相続税額=その人の相続税額×譲渡資産の相続税評価額÷その人が相続した財産の総額 |
(例)相続税額1000万円×譲渡する不動産の相続評価額4000万円÷相続財産の総額1億円=取得費加算額400万円
上記の場合は、支払った相続税のうち400万円を取得費に加算できます。
なお特例を使うには、下記のような要件を満たさなければなりません。相続税の申告期限から3年以内に譲渡した場合にしか適用できないので気をつけましょう。
<相続税の取得費算入の適用要件> ・相続や遺贈により財産を取得した者である ・その財産を取得した人に相続税が課税されている ・相続開始日の翌日〜相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡する 参考/国税庁|No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 |
これを適用するには「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」の記載が必要です。確定申告で、譲渡所得の内訳書とともに添付しましょう。
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詳しくはこちら>>ここまで見てきたとおり、マイホームを売って黒字が出たら、所得税を支払わなければなりません。この税金を計算するもとになる売却益のことを「譲渡所得」といいます。
土地や建物などの譲渡所得は「申告分離」という課税方式。確定申告では給与所得・事業所得・不動産所得など他の所得とは分けて計算します。
では実際に、マイホームの売却益=譲渡所得をどのように計算すればいいのか、細かく見ていきましょう。
譲渡所得はマイホームを売った金額から、マイホームを買ったときの金額や売買にかかった手数料などを差し引いて計算します。
課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額 |
この計算のもとになる、収入金額・取得費・譲渡費用・特別控除額はそれぞれ次のように計算します。
収入金額とは、マイホームを売ったときに、買主から受け取った金額です。例えばマンションを5000万円で売却したら、収入金額は5000万円となります。正確な収入金額は、売買契約書で確認しましょう。
取得費とは、マイホームを買ったときにかかった費用です。マイホームの購入代金だけでなく、税金や手数料などさまざまな費用が含まれます。
<取得費の例> ・土地や建物の購入代金、建築代金、仲介手数料、リフォーム費用、 ・購入時に納めた登録免許税、登記費用、不動産取得税、特別土地保有税、因子勢 ・立退料、造成費用、測量費、所有権確保のための訴訟費用など 参考/国税庁|No.3252 取得費となるもの |
このなかでも大きいのが、マイホームの購入代金。当時の売買契約書を用意して、いくらで購入したか証明するのが一般的です。しかし「古い家なので契約書をなくしてしまった」「親から相続した物件なので、正確な購入金額が分からない」といったケースもあるでしょう。
その場合に使えるのが「概算取得費の特例」。売却価格の5%相当額を取得費として算出できる特例です。例えばマイホームを5000万円で売却した場合は、その5%の250万円を取得費にすることができます。
ただし概算取得費で算入できるのはたったの5%。残りの95%が譲渡所得となってしまうため、税金が高くなる可能性があります。
まずは当時の通帳やマンションのパンフレット、住宅ローンの契約書、領収書など、当時の購入金額を証明できる資料が残っていないか探しましょう。どのような資料があれば証明できるか、税理士や税務署に相談するのもおすすめです。
土地は買った金額がそのまま取得費になりますが、建物は経年劣化とともに価値が減っていくもの。その目減り分を「減価償却費」として、取得費から差し引かなければなりません。
マイホームは非事業用資産なので、次のように減価償却費を計算します。
減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数 ※償却率:木造0.031、RC造0.015など決まっている。 ※経過年数:建物を取得してから売るまでの年数。6ヶ月以上の端数は1年として切り上げ、6ヶ月未満は切り捨てる。 参考/国税庁|「減価償却費」の計算について |
減価償却費を計算するには、建物と土地それぞれの価格を把握しなければなりません。例えば5000万円で購入したマンションで「土地は1000万円、建物は4000万円」の場合は、建物の4000万円の部分のみで減価償却費を計算します。
しかし建物と土地をセットで購入すると、それぞれの価格が分からないケースもあるでしょう。その場合、土地には消費税がかからないため、消費税から建物価格を逆算することもできます。
(例)消費税率5%の時代に購入したマンション。この売買契約書に「売買代金5000万円(うち消費税160万円)」と記載されていれば、次のように建物と土地の価格を逆算できます。
建物購入代金=160万円÷5%+160万円=3360万円(本体価格3200万円+消費税160万円)
土地購入代金=5000万円-3360万円=1640万円
譲渡費用とは、マイホームを売却したときにかかった費用のこと。不動産会社に支払った仲介手数料や、家屋を取り壊して更地にするための解体費用などが代表的です。その不動産の維持管理にかかったリフォーム費用や固定資産税などは、譲渡費用には含まれません。
<譲渡費用の例> ・仲介手数料、印紙税、立退料 ・土地を売るために建物を取り壊した費用、その建物の損失額 ・有利な条件で売るための売買契約の違約金 ・借地権を売るときの名義書換料など 参考/国税庁|No.3255 譲渡費用となるもの |
4000万円(建物3000万円・土地1000万円)で購入したマンションを、10年後に5000万円で売ったときの譲渡所得を計算してみましょう。
住宅の種類:マンション 購入価格:4000万円(建物3000万円・土地1000万円) 購入費用:200万円(建物150万円・土地50万円) 売却価格:5000万円 売却費用:200万円 所有期間:10年 |
<譲渡所得の計算>
建物の減価償却費=(建物価格3000万円+建物分費用150万円)×0.9×償却率RC造0.015×経過年数10年=425万2500円
建物の取得費=建物価格3000万円+建物分費用150万円−減価償却費425万2500円=2724万7500円
土地の取得費=土地価格1000万円+土地分費用50万円=1050万円
取得費の合計=建物分2724万7500円+土地分1050万円=3774万7500円
譲渡所得=売却価格5000万円−(取得費3774万7500円+譲渡費用200万円)=1025万2500円
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詳しくはこちら>>譲渡所得の計算方法が分かったので、次は税金の計算方法を見ていきましょう。
マイホームの売却益にかかる譲渡所得税は、その建物や土地を所有していた期間によって税率が変わります。所有期間5年を超えると、税率が大幅に下がります。
区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税(※) | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
※2013年〜2037年は、復興特別所得税として2.1%が加算されています。
ここで注意したいのは、所有期間は「不動産を売却した年1月1日時点」で判断されるということ。
例えば2017年7月に購入したマイホームを2022年9月に売却した場合、実際の所有期間は5年を超えます。しかし2022年1月1日時点の所有期間は5年以下なので、短期譲渡所得とみなされるのです。2023年1月1日以降に売却すると、長期譲渡所得として計算できます。
また「所有期間10年」を超えると、譲渡所得6000万円以下の部分のみに軽減税率が適用できます。
所有期間 | 譲渡所得 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税(※) | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
10年超 | 6000万円以下の部分 | 10% | 4% | 0.21% | 14.21% |
6000万円超の部分 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
※2013年〜2037年は、復興特別所得税として2.1%が加算されています。
短期譲渡所得とは、マイホームを売った年の1月1日時点で「所有期間が5年以内」の場合です。
税額=課税譲渡所得金額×39.63% |
長期譲渡所得とは、マイホームを売った年の1月1日時点で「所有期間が5年超」の場合です。
税額=課税譲渡所得金額×20.315% |
建物と土地のどちらも所有期間10年を超える場合、条件を満たすと「譲渡所得6000万円以下の部分」に軽減税率を適用することができます。なお6000万円を超える部分には、通常の長期譲渡所得の税率が適用されます。
6000万円以下の部分の税額=課税譲渡所得金額×14.21% 6000万円超の部分の税額=課税譲渡所得金額×20.315% |
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詳しくはこちら>>ここからは具体的に譲渡所得税がいくらかかるか、3000万円特別控除を含めて計算してみましょう。まずはマイホームを購入してから5年以内に売る場合の、短期譲渡所得の税額を試算します。
住宅の種類:マンション 購入価格:6000万円(建物4000万円・土地2000万円) 購入費用:300万円(建物200万円・土地100万円) 売却価格:7500万円 売却費用:200万円 所有期間:3年 |
<譲渡所得の計算>
建物の減価償却費=(建物価格4000万円+建物分費用200万円)×0.9×償却率RC造0.015×経過年数3年=170万1000円
建物の取得費=建物価格4000万円+建物分費用200万円−減価償却費170万1000円=4029万9000円
土地の取得費=土地価格2000万円+土地分費用100万円=2100万円
取得費の合計=建物分4029万9000円+土地分2100万円=6129万9000円
譲渡所得=売却価格7500万円−(取得費6129万9000円+売却費用200万円)=1170万1000円
<3000万円特別控除を適用しない場合の税額>
税額=譲渡所得1170万1000円×39.63%=463万7106円
所有期間が3年しか経過していないため減価償却費は小さく、計上できる取得費は大きくなります。しかし長期譲渡所得の税率が適用されるため、支払うべき税額は高めです。
<3000万円特別控除を適用する場合の税額>
譲渡所得1170万1000円が3000万円特別控除額を下回るため、この場合の税額は0円になります。
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詳しくはこちら>>次に同じマンションを長期所有していた場合の税額を計算してみましょう。長期譲渡所得は所有10年超で軽減税率が使えるので、所有期間8年と12年の2つのケースを考えたいと思います。
住宅の種類:マンション 購入価格:6000万円(建物4000万円・土地2000万円) 購入費用:300万円(建物200万円・土地100万円) 売却価格:7500万円 売却費用:200万円 所有期間:8年 |
<譲渡所得の計算>
建物の減価償却費=(建物価格4000万円+建物分費用200万円)×0.9×償却率RC造0.015×経過年数8年=453万6000円
建物の取得費=建物価格4000万円+建物分費用200万円−減価償却費453万6000円=3746万4000円
土地の取得費=土地価格2000万円+土地分費用100万円=2100万円
取得費の合計=建物分3746万4000円+土地分2100万円=5846万4000円
譲渡所得=売却価格7500万円−(取得費5846万4000円+売却費用200万円)=1443万6000円
<3000万円特別控除を適用しない場合の税額>
税額=譲渡所得1443万6000円×20.315%=293万2673円
所有期間3年の場合よりも減価償却費は高くなり、そのぶん譲渡所得から差し引ける取得費は小さくなります。しかし長期譲渡所得の低い税率が適用できるので、支払う税額は所有期間3年の場合よりも少ないです。
<3000万円特別控除を適用する場合の税額>
譲渡所得1443万6000円が3000万円特別控除額を下回るため、この場合の税額は0円になります。
住宅の種類:マンション 購入価格:6000万円(建物4000万円・土地2000万円) 購入費用:300万円(建物200万円・土地100万円) 売却価格:7500万円 売却費用:200万円 所有期間:12年 |
<譲渡所得の計算>
建物の減価償却費=(建物価格4000万円+建物分費用200万円)×0.9×償却率RC造0.015×経過年数12年=680万4000円
建物の取得費=建物価格4000万円+建物分費用200万円−減価償却費680万4000円=3519万6000円
土地の取得費=土地価格2000万円+土地分費用100万円=2100万円
取得費の合計=建物分3519万6000円+土地分2100万円=5619万6000円
譲渡所得=売却価格7500万円−(取得費5619万6000円+売却費用200万円)=1680万4000円
<3000万円特別控除を適用しない場合の税額>
税額=譲渡所得1680万4000円×14.21%=238万7848円
所有期間が長いぶん、減価償却費が大きくなります。しかし所有期間10年を超えるため軽減税率が適用され、この場合は所有期間3年・8年のケースよりも支払う税額は少なくてすみます。
<3000万円特別控除を適用する場合の税額>
譲渡所得2080万4000円が3000万円特別控除額を下回るため、この場合の税額は0円になります。
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詳しくはこちら>>共有名義のマイホームを売却するとき、3000万円特別控除は名義人全員が使えます。夫婦でマイホームを共有名義にしていれば、夫婦それぞれが控除を受けられるということです。
譲渡所得:6000万円 夫婦の持分割合:1対1 |
夫の譲渡所得=妻の譲渡所得=6000万円×1/2=3000万円
どちらも3000万円特別控除を適用すると、夫婦の支払う税金は0円です。
譲渡所得:6000万円 夫婦の持分割合:2対1 所有期間:8年 |
夫の譲渡所得=6000万円×2/3=4000万円
妻の譲渡所得=6000万円×1/3=2000万円
この場合、妻は3000万円特別控除を適用することで税額0円になりますが、夫は3000万円を超える部分に税金が課されます。
夫の税額=(4000万円-3000万円)×20.315%=203万1500円
持分割合は1対1に近いほど、将来マイホームを売却したときの譲渡所得税は抑えられます。夫婦でマイホームの持分割合や出資率に悩んだときは、この話も頭に入れておくとよいでしょう。
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詳しくはこちら>>マイホームを売却するときの譲渡所得税は、所有期間が長いほど税率が下がります。所有期間5年と10年が区切りになっており、この2つのタイミングを超えた直後に売却するのがお得です。
ただしほとんどのマイホームでは、含み益が3000万円を超えることはありません。3000万円特別控除が利用できれば、支払う税金は0円になるでしょう。
3000万円特別控除を適用するには、取り壊しのタイミングや他の特例の利用などさまざまな条件があります。またマイホームを買い換える場合、住宅ローン控除と3000万円特別控除は併用不可のため注意が必要です。迷ったときは税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。