資産管理会社を設立して不動産や株を管理する方法は、富裕層のものというイメージがあるかもしれません。しかし実際にはサラリーマンでも不動産投資や副業をされている方なら、資産管理会社による節税などの恩恵を得られることがあります。今回は資産管理会社を設立するメリット・デメリットや設立に向いている方の特徴、活用法や注意点など詳しく解説します。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>CONTENTS
資産管理会社とは、個人の資産を管理するための法人のこと。プライベートカンパニーと呼ばれることもあります。税務的なメリットが多く、たくさんの資産を持っている富裕層やオーナー社長、資産運用や副業を行っているサラリーマンなどが活用されています。
法人設立というと難しいように聞こえるかもしれませんが、意外と株式会社や合同会社の設立は簡単です。資本金は1円から可能で、登記費用や印鑑作成などの初期費用があれば設立することができます。
ただし法人にすることで事務作業は複雑に。税理士報酬などの維持コストもかかるので気をつけましょう。法人は設立にも廃業にもお金や手間がかかるので、設立時はメリット・デメリットの双方を抑えたうえで、慎重に判断されることをおすすめします。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>資産管理会社を設立すると、所得税や相続税の節税などのメリットがあります。さらに経費を増やしたり、赤字を繰越せたりすることも。詳しく仕組みを見ていきましょう。
個人の所得税は、高収入になればなるほど税率が上がっていく累進課税方式がとられています。住民税10%の負担も加味すると、個人の所得に対する税負担は最大55%にもなります。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除率 |
1,000〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万〜329万9,000円 | 10% | 97,500円 |
330万〜694万9,000円 | 20% | 427,500円 |
695万〜899万9,000円 | 23% | 636,000円 |
900万〜1,799万9,000円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万〜3,999万9,000円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円〜 | 45% | 4,796,000円 |
参考/国税庁|所得税の税率
一方、法人税率は、普通法人で最大23.4%。地方法人税や事業税などを含めた実効税率で考えても、最大34%ほどです 。そのため高収入で高い税率が課せられている方は、資産管理会社を設立した方が税率を低くできる場合があります。
参考/国税庁|法人税の税率
資産管理会社で配偶者や親族などを従業員として雇うと、その家族に給与を支払うこともできます。支払った給与は会社の経費になるため、法人税を減らす効果があります。
元々高収入だった方は、不動産投資でご自身の所得を増やすよりも、専業主婦の妻や両親などに給与を支払ったほうが所得税率は低くなるでしょう。家計全体で考えると税金が抑えられるぶん手残りを増やすことができます。
ただし家族が業務にまったく関与していない場合は、給与はなかったものとして税務署から否認される可能性もあるので注意しましょう。
個人事業として不動産投資を行うより、資産管理会社を設立したほうが経費を増やせるというメリットも。法人のみ計上できる代表的な経費が、生命保険や社宅の家賃です。
個人事業主や会社員が生命保険料を支払った場合、控除できるのは最大年12万円です。 しかし法人契約で役員や従業員の生命保険料を負担すると、保険料をそのまま経費に算入できます。ただし保険金が支給されたときに法人税が課税される点には注意が必要です。
個人事業主の家賃については、事業用として使っている部分のみが経費の対象です。しかし法人の場合は社宅として借り上げることで、プライベートに使っている部分も経費にできるケースがあります。
個人事業主が赤字を繰り越せるのは、翌年以後最大3年間。しかし法人であれば赤字を最大10年間も繰り越すことができます。
特に不動産投資の場合は、不動産を買うときに仲介手数料など大きな支出があるもの。個人の3年間の欠損繰越だけでは赤字を消化しきれないことも多いため、繰越期間が長いのは大きなメリットになります。
多額の資産がある方は、資産管理会社を相続税対策として活用できる場合もあります。
多額の資産を生前贈与すると贈与税の対象になり、最高55% とかなり大きな税金が課税されます。また本人が亡くなって不動産を相続する場合は、相続税がかかることに。もし相続税の納税資金がなければ、土地や建物を手放さなければなりません。
そこで資産管理会社をつくり、親族に対して給与という形であらかじめ資産を移転。そうすることで不動産を売却することなく、相続税を支払う資金を準備できます。また現金だけでなく、資産管理会社の株式という形で渡しておくことで、遺産分割がしやすくなるのもメリットです。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>多くのメリットがある資産管理会社ですが、設立時には初期費用がかかり、毎年一定の維持コストも発生します。運営コストが節税分を上回るようなら、法人を設立せずに個人のまま投資を続けた方が有利になるでしょう。デメリットも抑えたうえで、ご自身にとっての法人設立の意味を考えましょう。
資産管理会社をつくって資産を移転するときには、次のような初期費用がかかります。
法人設立手続きはご自身でもできますが、手間や時間がかかるため司法書士に頼むのが一般的。資本金の最低金額は1円ですが、銀行からの融資をスムーズに進めるためにも一定額入れる方が多いです。
また個人名義の不動産を資産管理会社に移すときにも、登録免許税・不動産取得税・消費税などのコストが発生します。
資産管理会社の維持コストは、主に法人税等と税理士への報酬です。法人の場合は赤字でも、法人住民税の均等割として年間7万円の税金を支払う必要があります。
個人の確定申告とは違って、法人の経理処理は複雑なため、税理士に依頼するのが一般的です。依頼する税理士や、会社の規模によっても報酬は異なります。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>資産管理会社は株式会社や合同会社などさまざまな形態がありますが、法務局へ登記さえすれば誰でも設立することができます。しかしイニシャルコストもランニングコストもかかるので、メリットが大きい場合のみ設立を検討されるとよいでしょう。
資産管理会社の設立が向いているのは、次のような方です。
個人の所得税と法人税の税率のみを考えると、課税所得800万円くらいを境に法人税が安くなり始めます。しかし法人のみで計上できる経費や維持コスト、個人で受けられる各種控除などさまざまな要素が絡んでくるので、一概に「年収○万円から得になる」とはいえません。資産額や経費の内容によっても変わってくるので、年収700万円を超えるあたりから法人設立を検討しはじめるとよいでしょう。
なお、サラリーマンの場合は、会社で副業が禁止されていないか確認することも大切です。不動産賃貸業や株式売買はOKでも、資産管理会社から給与をもらうのはNGというケースもあります。
不動産などの資産が多く、家族のために相続税対策をしておきたいという方も、資産管理会社を検討されるとよいかもしません。
相続税の基礎控除の額は「3,000万円+600万円×相続人の数」で計算され、相続人の数によって変動します。相続財産の総額が、基礎控除の金額を超えている場合は、遺されたご家族は相続税を納めなければなりません。
また相続する財産として建物や土地が多いと、相続税を支払うための現金が足りないというケースもあります。そういった場合は、資産管理会社を設立することで、毎年少しずつ給与としてご家族に資金を移しておくことができます。
相続税対策として資産管理会社を検討される場合は、将来の相続税額をしっかりと把握しておくことが大切です。どのくらい相続税が減らせそうか、プロに試算してもらいましょう。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>資産管理会社を設立するには、次のような準備や手続きが必要になります。
まずは法人設立にあたって、基本的な情報を整理します。
社名 | 名前の前後どちらかに「株式会社」や「合同会社」といった種類を入れる。 |
本店所在地 | 自宅や賃貸事務所、バーチャルオフィスなど登記する住所を決める。 |
資本金の額 | 資本金の最低金額は1円。資産管理会社の場合は、資本金が少額の場合も多い。 |
出資者・役員構成 | 資産の分配や財産の相続がスムーズに行えるように設計する。 |
決算月 | 1〜12月まで自由に決められる。繁忙期を避けたり、消費税の免税期間の長さで決めたりする。 |
会社の基本情報やルールは「定款」という文書にまとめます。その定款が正式な手続きに則って作成されたことを証明するため、本店所在地の都道府県にある公証役場で定款の認証という手続きをおこないます。
また、資本金を銀行口座に払い込んだり、法人の実印を作成したりといった準備も必要になるでしょう。
資産管理会社を設立するには、法務局で法人登記の手続きが必要です。その際、次のような書類の準備が必要になります 。
登記申請書 | 法務局に法人設立を申請する書類。 |
登録免許税納付用台紙 | 登録免許税分の収入印紙を貼り付ける。 |
定款 | その法人の基本的なルールが記載された書類。会社の名前や事業内容、さまざまな規則などをまとめる。 |
発起人の決定書 | 定款で代表取締役を定めていない場合。 |
設立時取締役・代表取締役の就任承諾書 | 取締役の人数分が必要。 |
資本金の払込を証する書類 | 資本金の払込みが記帳されている通帳のコピーなど。 |
印鑑届出書 | 法人実印を法務局に届ける書類。実印は銀行口座開設や、不動産の売買契約などに使う。 |
登記すべき事項を記載した書面・CD-R | CD-Rが推奨されている。 |
必要書類がそろったら、管轄の法務局で法人登記の手続きを行います。郵送でも行えるので、法務局のホームページ等で確認しましょう。
会社設立の登記申請は、原則としては代表取締役が行うものです。しかしさまざまな準備や手続きが必要になるため、司法書士などの専門家への相談も視野に入れるとよいでしょう。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>資産管理会社を設立すると、事務手続きの手間が増えたり、税理士報酬などのコストがかかったりとデメリットもあります。赤字がでても、毎年最低7万円の法人住民税は支払い続けなければなりません。仮に節税効果があったとしても、それ以上に手間やコストが増えるようなら設立しないほうが良いでしょう。
また、一度設立した法人を廃業するときにも、手間や費用がかかるので注意が必要です。不動産を法人名義に変えるときに移転コストがかかりますが、逆に個人名義に戻すときにも移転コストがかかります。
理想の住まいをワンストップで実現できるリノベーションサービス「MyRENO マイリノ」
詳しくはこちら>>資産管理会社を活用することで、節税や相続税対策になるなど大きなメリットが得られるケースもあります。しかし法人を設立すると事務作業の手間やコストも増えるため、設立前にしっかりシミュレーションすることが大切です。メリットとデメリットのどちらが大きくなるかは、ご自身の収入や資産の状況によっても異なります。詳しくは税理士などの専門家に相談されるとよいでしょう。