住宅ローン控除は、ここ最近では2022年に大きな改正が行われました。住宅ローン控除によって、所得税額がゼロになるケースもありますが、諸条件によります。
住宅ローン控除について、令和6年(2024年)税制改正を含め、現行の制度について紹介していきます。
CONTENTS
住宅ローンの控除とは、住宅借入金等特別控除という所得税の税額控除の制度です。住宅ローンを利用してマイホームの新築や購入、リフォームなどをした場合に、一定の要件を満たすと、一定の期間にわたって、借入限度額を上限に年末のローン残高に応じて所得税の控除が受けられます。所得税から控除しきれない場合には、一定の範囲内で住民税からの控除を受けることができます。
住宅ローン控除は、これまで何度も制度改正が繰り返されてきました。
▼住宅ローン控除とは?住民税控除も受けるにはどうすればいい?
住宅ローン控除は新築住宅だけではなく、中古住宅の購入やリフォームなども対象です。共通する主な要件として、以下が挙げられます。
・引き渡しから6ヶ月以内に居住していること。
・住宅ローン控除の適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること。
・2つ以上の住宅を保有している場合は主に居住する住宅であること。
・住宅ローン控除の適用を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
・床面積50平米以上で、事業にも利用している場合は床面積の1/2以上を居住用に用いていること。(2024年12月までに建築確認を受けている場合は、合計所得金額1000万円以下の人に限り、床面積40平方米以上)
・住宅ローンの返済期間が10年以上あること。
参照:
国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」
国土交通省「住宅ローン減税」
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詳しくはこちら>>住宅ローン控除の対象となる所得税とは、1月1日から12月31日の1年間の所得に対して課税される税金です。
所得税は、以下の計算式で算出します。
所得金額=収入-(必要経費・給与所得控除額等)
課税所得金額(所得金額-各種所得控除額)×税率-税額控除=所得税額
会社員や公務員の場合は給与収入から給与所得控除額を引いて、給与所得を算出します。そして、給与所得から各種所得控除額を引いて、課税所得金額を求めます。課税金額に税率を掛けた後、住宅ローン控除などの税額控除額を引いた額が所得税額となります。
所得税は超過累進税率のため、以下の速算表を用いると簡単に求めやすくなります。
課税所得の算出に用いる所得控除には以下の種類があり、物的控除と人的控除に分けられます。
【物的控除】
所得控除の種類 | 概要 | 控除額 |
---|---|---|
社会保険料控除 | 健康保険や国民健康保険、国民年金、厚生年金など、社会保険料の支払い額を控除。生計を一にする配偶者や親族の分を含めることもできる。 | 支払った社会保険料の合計額 |
生命保険料控除 | 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の一定額を控除。 | 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の控除額をそれぞれ以下から求めた合計額。 ・2万円以下:全額 ・2万円超4万円以下:保険料×1/2+1万円 ・4万円超8万円以下:保険料×1/4+2万円 ・8万円超:4万円 ※上記は新制度にもとづく契約の場合 |
地震保険料控除 | 地震保険料の一定額を控除。 ※旧長期損害保険に係る経過措置あり | 5万円を限度に支払った保険料 ・5万円以下:全額 ・50,000円超:5万円 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済と企業型DC、iDeCo、心身障害者扶養共済の掛金を控除。 | 支払った掛金の合計額 |
医療費控除 | 生計を一にする配偶者や親族の分を含め、医療費の支払いが一定額を超えた場合に適用される。 ※2026年まではセルフメディケーション税制も選択可 | (年間の医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円 ※総所得金額200万円未満の場合は、(年間の医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-総所得金額×5% |
寄附金控除 | 国、地方公共団体、特定公益増進法人などへの特定寄附金を支払った場合に控除を受けられる。 ※政治活動や認定NPO法人への寄附に対する寄付控除制度もあり | 特定寄附金の合計額(総所得×40%を限度)-2,000円 ※ふるさと納税など都道府県・市区町村などへの寄附は住民税からの税額控除あり |
雑損控除 | 災害や盗難、横領によって、棚卸資産や事業用固定資産、生活に通常必要でない資産のいずれにも該当しない資産が被害を受けた場合に適用される。総所得金額48万円以下の生計を一にする配偶者や親族の損害を含めることもできる。 | 以下のいずれか多い方の金額 ・(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金)―(総所得金額)×10% ・(災害関連支出の金額-保険金)-5万円 |
【人的控除】
所得控除の種類 | 概要 | 控除額 |
---|---|---|
基礎控除 | 年間所得金額2,500万円以下であれば対象となる。 | 合計所得金額に応じた以下の金額 ・2,400万円以下:48万円 ・2,400万円超2,450万円以下:32万円 ・2,450万円超2,500万円以下:16万円 |
配偶者控除 | 民法上の配偶者が生計を一にし、合計所得金額48万円以下で、青色申告者の事業専従者としてその年の給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない場合に適用される。 | 本人の合計所得金額に応じた以下のいずれかの金額 ・900万円以下:一般の控除対象配偶者38万円、老人控除対象配偶者48万円 ・900万円超950万円以下:一般の控除対象配偶者26万円、老人控除対象配偶者32万円 ・950万円超1,000万円以下:一般の控除対象配偶者13万円、老人控除対象配偶者16万円 |
配偶者特別控除 | 本人の合計所得金額1,000万円以下で、民法上の配偶者が生計を一にし、合計所得金額48万円超133万円以下など、一定の要件を満たしている場合に適用される。青色申告者の事業専従者としてその年の給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者ではないことも要件。 | 本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じて、1万円~38万円 |
扶養控除 | 生計を一にする配偶者以外6親等内の血族や3親等内の姻族などで、年間の合計所得金額48万円以下の16歳以上の人を扶養している場合に適用される。 青色申告者の事業専従者としてその年の給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者ではないことも要件。 | 控除対象扶養親族1人につき、以下のいずれかの金額 ・一般の控除対象扶養親族:38万円 ・老人扶養親族:同居以外48万円、同居58万円 |
障害者控除 | 本人及び同一生計の配偶者や扶養親族が所得税法上の障害の者に当てはまる場合に適用される。 | 1人につき以下のいずれかの金額 ・障害者:27万円 ・特別障害者:40万円 ・同居特別障害者:75万円 |
ひとり親控除 | 生計を一にする子がいるなど、一定の要件を満たすひとり親である場合に適用される。 | 35万円 |
寡婦控除 | ひとり親に該当せず、一定の要件を満たす寡婦である場合に適用される。 | 27万円 |
勤労学生控除 | 給与所得などの所得がある学生・生徒で、合計所得金額75万円以下など、一定の要件を満たす場合に適用される。 | 27万円 |
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詳しくはこちら>>住宅ローン控除は令和4年(2022年)税制改正によって、2022年から大きな改正が行われています。これまでは借入限度額の範囲内で、年末のローン残高の1%が控除されましたが、2022年からは0.7%に引き下げられました。
また、所得制限が原則として2,000万円に引き下げられています。住宅の種類ごとに借入限度額が設定され、2024年以降は新築住宅と買取再販では省エネ基準に適合していない住宅は対象外とされたことも、大きな変更点です。
借入限度額
(最大控除額:年間・合計)
住宅の種類 | 控除率/控除期間 | 2022年・2023年入居 | 2024年(一般世帯)・2025年入居 | 2024年(子育て世帯)入居 | |
---|---|---|---|---|---|
新築 買取再販 | 認定長期優良住宅 認定低炭素住宅 | 0.7%/ 13年 | 5,000万円 (35万円・455万円) | 4,500万円 (31.5万円・409.5万円) | 5,000万円 (35万円・455万円) |
新築 買取再販 | ZEH水準省エネ住宅 | 0.7%/ 13年 | 4,500万円 (31.5万円・409.5万円) | 3,500万円 (24.5万円・318.5万円) | 4,500万円 (31.5万円・409.5万円) |
新築 買取再販 | 省エネ基準適合住宅 | 0.7%/ 13年 | 4,000万円 (28万円・364万円) | 3,000万円 (21万円・273万円) | 4,000万円 (28万円・364万円) |
新築 買取再販 | その他の住宅 | 0.7%/ 13年 | 3,000万円 (21万円・273万円) | 0円 | 0円 |
既存住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅 | 0.7%/ 10年 | 3,000万円 (21万円・210万円) | 3,000万円 (21万円・210万円) | 3,000万円 (21万円・210万円) |
既存住宅 | その他の住宅 | 0.7%/ 10年 | 2,000万円 (14万円・140万円) | 2,000万円 (14万円・140万円) | 2,000万円 (14万円・140万円) |
※2024年・2025年入居のその他の住宅で、2023年12月末までに建築確認を受けている場合、または2024年6月に建築している場合は控除期間10年、借入限度額2,000万円。
※2024年の子育て世帯の借入限度額は令和6年(2024年)税制改正による。
参照:
国土交通省「住宅ローン減税」
国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
令和4年(2022年)税制改正において、控除率は一律0.7%に引き下げられました。住宅ローンは1%に満たない低金利で借りられることもあるため、住宅ローンを借りて住宅ローン控除を受けた方が有利となる、いわゆる逆ザヤの状態を解消するのが目的です。控除期間は新築住宅と買取再販は13年、既存住宅は10年です。
最大控除額は住宅の種類ごとに設定された借入限度額によります。ただし、実際の住宅ローン控除による控除額は、借入限度額の範囲内で年末ローン残高の0.7%です。後述するように、住宅ローン控除可能額が課税所得金額を上回る場合には、住民税から一定の範囲内で控除を受けられます。
住宅ローン控除の適用には所得制限があり、以前は年間の合計所得3,000万円以下の人が対象でした。2022年からは年間の合計所得2,000万円以下に引き下げられ、高所得者層がより利用しにくい制度となりました。
一方で、床面積50平米以上という要件について、年間の合計所得1,000万円以下の場合は40平米以上への緩和があり、令和6年(2024年)税制改正においても、2024年12月31日まで延長されています。
住宅ローン控除による控除額は、住宅の種類ごとに決められた借入限度額が適用を受けられる借り入れ上限額となります。借入限度額は住宅の種類によって異なり、2024年入居の場合は認定長期優良住宅・認定低炭素住宅は一般世帯4,500万円、子育て世帯5,000万円、ZEH水準省エネ住宅は一般世帯3,500万円、子育て世帯4,500万円、省エネ基準適合住宅は一般世帯3,000万円、子育て世帯4,000万円です。子育て世帯への上乗せは令和6年(2024年)税制改正によるものです。
また、2025年4月からのすべての新築住宅の省エネ基準適合義務化に先駆けて、2024年1月1日以降に建築確認申請を受ける新築住宅が、住宅ローン控除の適用を受けるには、省エネ基準に適合する必要がある点に注意が必要です。
参照:国土交通省「2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で住宅ローン減税を受けるには省エネ性能が必須となります」
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詳しくはこちら>>住宅ローン控除は本来、負担する所得税額から控除額を引く税額控除の制度です。住宅ローン控除の適用を受けると、課税所得金額、入居した年や住宅の種類などによる借入限度額、年末のローン残高によっては、所得税額がゼロになることがあります。また、所得税から住宅ローン控除による控除額を引き切れない場合には、一定の額まで住民税からの控除を受けられます。
住宅ローン控除で所得税がゼロになるケースなどについて、詳しくみていきます。
住宅ローン控除で所得税がゼロになるのは、住宅ローンの年末残高の0.7%が所得税を超える場合です。ただし、住宅の種類別に設定された借入限度額が条件です。省エネ基準適合住宅の場合は、2024年入居では住宅ローンを5,000万円借りていても、住宅ローン控除が適用される上限は、一般世帯3,000万円、子育て世帯4,000万円になります。
<計算例>
給与収入:600万円
給与所得控除:164万円
基礎控除:48万円
社会保険料控除:90万円
年末のローン残高:4,000万円(2024年12月入居/子育て世帯/新築の省エネ基準適合住宅)
※その他の所得控除はないものとする。
課税所得:(600万円-164万円)-48万円-90万円=298万円
所得税額:298万円×10%-9万7,500円=20万500円
住宅ローン控除可能額:4,000万円×0.7%=28万円
20万500円-28万円=-7万9,500円
⇒所得税ゼロ
この計算例では、借入限度額の範囲内の住宅ローンの利用で、住宅ローンの年末残高0.7%が所得税額を上回るため、所得税はゼロとなります。
住宅ローン控除による控除額が所得税から引ききれない場合には、一定の範囲以内で翌年の住民税から控除を受けられます。
翌年の住民税からの控除額=所得税の住宅ローン控除可能額-住宅ローン控除の適用前の所得税額
住民税からの控除額の上限は、2022年以降に入居した場合には課税総所得金額の5%(上限:9万7,500円)が限度となります。2021年12月31日までの入居では、課税総所得金額の7%(上限:136,500円を限度)であったため、住民税からの控除額の引き下げも行われています。
参照:総務省「新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ 個人住民税の住宅ローン控除がうけられる場合があります。」
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詳しくはこちら>>ふるさと納税とは、都道府県や市区町村への寄附制度です。寄附金額から2,000円を引いた額が所得税や住民税から控除されますが、収入などによる上限額があります。ふるさと納税を利用するには、原則として確定申告が必要です。ただし、確定申告が不要な人で、寄附先の自治体が5団体以内の場合には、各自治体へ申請書を提出するワンストップ特例制度を利用することが可能です。
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用について、詳しくみていきます。
参照:総務省 ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ」
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は可能ですが、住宅ローン控除の控除額に影響する場合もあります。
ふるさと納税が所得税から控除される場合は、先に所得税額からふるさと納税による控除額が控除されるため、課税所得金額が減ります。所得税から引き切れない額が増えると、住民税から控除できる上限額を上回り、住宅ローン控除で節税できる額が減るケースがあります。
ただし、これは確定申告を行うケースであり、ワンストップ納税を利用する場合には、全額が住民税から控除されるため、住宅ローン控除に影響はありません。
住宅ローン控除を受ける1年目は、会社員などの給与所得者であっても確定申告が必要です。そのため、ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用することができません。ふるさと納税によって課税所得金額が減るという点に注意が必要です。
住宅ローン控除を受ける2年目以降は、会社員などの給与所得者は年末調整での手続きが可能です。ただし、医療費控除を受ける場合など、確定申告を行う年はワンストップ特例制度を利用することができなくなります。
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詳しくはこちら>>住宅ローン控除の適用を受けることで所得税がゼロになることはあります。ただし、住宅ローン控除は2022年の制度改正により、借入限度額が引き下げられていることや控除率が下げられたことから、従来よりも所得税がゼロになりにくくなっています。また、新築住宅では、借入限度額は環境性能による違いが大きくあります。
実際に住宅ローン控除で控除される額は、年収や家族構成、利用できる所得控除などによって異なるため、専門家に相談するのがおすすめです。
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詳しくはこちら>>住宅ローン控除は2022年の制度改正によって大きく変わり、2022年からは控除率が0.7%に引き下げられ、控除期間は新築住宅と買取再販は13年間、既存住宅(中古住宅)は10年間となりました。
また、2024年からは、原則として新築住宅は省エネ基準適合住宅以外は対象外となり、借入限度額の引き下げが行われています。一方で、その他の住宅を除くと、子育て世帯は2022年・2023年の借入限度額が維持されています。
住宅ローン控除は制度改正が繰り返されているため、現行制度についてよく理解しておくことが大切です。
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