ケイカル板とは？価格や耐火・耐水性の特徴を解説

ケイカル板は、住まいのなかで広く使用されている内装材ですが、名前だけを聞いてもピンとこない人も多いかもしれません。一体どのような特徴を持つ建材なのでしょうか？また、「石膏ボード」とはどのような違いがあるのでしょうか？ケイカル板を実際に使用した施工事例もご紹介しています。

■ケイカル板とは？

ケイカル板とは、「珪酸（けいさん）カルシウム板」の略称で、ケイ酸質を原料とした建築材料です。「繊維強化セメント板」というカテゴリに分類されます。

・ケイカル板のおもな原料

・ケイ酸質原料…珪藻土、珪砂
・石灰質原料…おもに消石灰
・補強用繊維…パルプなど
・そのほか混和材料

ケイカル板の製造方法を大まかに解説すると、原料を混合して板状に成形する→オートクレーブ（高温高圧蒸気釜）処理によりケイ酸カルシウム水和物に結晶化する→乾燥させる→製品となります。建築材料として、内装材のほか半外部（外気に触れる、直接水がかからない場所）にも、さまざまな場所で使用されています。

また、ケイカル板は製造方法によって2種類に分けられます。

※抄造（しょうぞう）とは、紙をつくるときのように原料を漉いて成形する方法です。「ケイ酸カルシウム タイプ3」のほうが軽量ですが、「タイプ2」に比べると欠けやすいという特徴があります。なお、現在「タイプ1」は生産されていません。

■ケイカル板の特徴

ケイカル板はどのような特徴を持った内装材なのでしょうか。

・耐熱性、断熱性がある

ケイカル板は主原料が不燃性物質のため、容易に燃えません。耐熱温度は製品により異なりますが、国土交通省により一定の耐火性能が認められた製品は、防火区画に使用することができます。また、木材と同程度の断熱性があります。

・軽量である

「繊維強化セメント板」に分類される、ほかの内装材に比べて軽量です。セメント質原料と補強繊維が主原料の「フレキシブルボード」はケイカル板の約2倍、石膏と補強繊維が主原料の「スラグ石膏」は約1.25倍の重さがあります。

・リーズナブル

ケイカル板は、ほかの繊維強化セメント板に比べて安価です。仕上げの種類や厚さなどにより価格は異なりますが、もっとも一般的な平板であれば、大きさ910mm×1820mm、厚さ6mmのもので1,000円ほどになります。建築材料を多く扱っているホームセンターであれば、店頭で購入することも可能です。

・水濡れ、湿度に比較的強い

内装材としては比較的水分に強いため、キッチン・洗面室・トイレといった水まわりや地下室、半外部の軒天井（ひさしの天井）など、湿度が高い場所へ使用することができます。とはいえ、完全な耐水性・防水性はないため、浴室の壁や外壁など直接水や雨が掛かる場所の使用には適していません。

・腐食しにくい

ケイカル板の主原料は無機質のため腐食しにくく、アルカリ性のためカビが生えにくいという特性があります。

・寸法安定性に優れている

オートクレーブ処理による主原料の結晶化により、構造が安定しています。一般的な使用環境において、温度や湿度による寸法の変化がたいへん小さく、反りや収縮がほとんど生じないため、割れやクラック（ひび）が起きにくいです。

・加工性、施工性に優れている

木質系建材と同様に、のこぎりやカッターでの切断・ねじや釘の使用・かんな掛けなどが容易にできるため、加工や施工がしやすいです。

・耐衝撃性が高い

原料に繊維質を混合することで強度を補強しているため、粘り強い素材となっており、耐衝撃性が高いです。板の厚みに応じて、柱や壁などの曲線部分に施工することもできます。

■ケイカル板と石膏ボードとの違い

・石膏ボードとは？

ケイカル板と用途が似た不燃・準不燃建材として「石膏ボード（プラスターボード）」があります。その名が示すとおり、石膏を主成分とした板状の建材です。石膏ボードは、コストパフォーマンスや安定性の高さや加工の容易性などから、内装材として広く使用されていますが水に弱く、湿度の高い場所での使用には適していません。そのため、水回りや半外部などの耐水性が求められる場所では、湿気に強いケイカル板が使用されます。

■ケイカル板の種類と用途

ケイカル板にはいくつかの仕上げがあり、施工場所や用途に合わせて選択することができます。

・平板

一般的なケイカル板です。そのまま使用することもできますし、表面を塗装やクロス（壁紙）で仕上げることもあります。

用途：店舗や住宅など各種建築物の天井・壁・軒天井、キッチン・給湯室・洗面室といった水まわりの天井・壁、駐車場の天井など

◇長尺タイプ

一般的なケイカル板の大きさは幅910mm×長さ910mmや910mm×1820mmですが、長尺タイプは長さが2420mmあるいは2730mmある製品です。広い面積を効率よく施工することができます。一般的な居室の壁であれば、天井までの高さをつなぎ目をつくることなく配置可能です。

・有孔板（貫通板）

ケイカル板に均一な間隔で貫通する穴を開けた製品です。空間を密閉せずに、風通しを確保することができます。また、有孔板の内側を二重にして空気層を設けたり、さらにグラスウール等の吸音材を充填したりすることで、高い防音効果を持たせることも可能です。

用途：スタジオ・劇場・ホールなど防音効果を必要とする空間の天井・壁、軒天井など通風を確保したい場所など

・積層板

2枚以上のケイカル板を重ねて接着した、厚みのある製品です。耐火性能や耐衝撃性能を向上しています。

用途：防水シートや陶磁器タイルの下地用板、倉庫や駐車場の耐火壁など

・化粧板

ケイカル板の表面をサンダーでなめらかに処理したのち、塗装・シート・突板などで化粧仕上げを施した製品です。見た目の美しさのほか、軽い水濡れに強くなるため拭き掃除がしやすくなっています。

用途：キッチン・洗面室・トイレといった水まわりの壁・天井、病院やクリーンルームなど清掃性が求められる場所など

■ケイカル板の施工事例

・軒天井をケイカル板でリフォーム

http://www.suntex-yamaguchi.com/works/jikkyou/works-9838/

住宅の軒天井をケイカル板で張替えた事例です。劣化により反りが生じていた部分の天井材を撤去し、ケイカル板を設置。既存の換気口を再利用して取り付け、通風を確保しています。つなぎ目にはリーリング剤で塞ぎ、軒天井全体を塗装で仕上げています。

・雨漏りで傷んだ軒天井をケイカル板に

https://hinoki-izumi.co.jp/works-yane.html

経年劣化で傷んでいたマンションの軒天井を、ケイカル板でリフォームした事例です。雨漏りが生じていたため、既存の軒天井を撤去したのち下地工事を実施。ケイカル板を張って仕上げています。

・ケイカル板を塗装でメンテナンス

https://www.my-painter.com/column/20190201gennba5/

こちらは塗装業者さんの事例です。ベランダの裏側にケイカル板が使用されています。色あせや汚れが目立ってきたら、メンテナンス時期の目安。劣化が進む前に塗装し直すことで、ケイカル板の寿命を伸ばすことができます。

・スタイリッシュなホテルの天井

https://kenzai-digest.com/aida-atelier/

こちらの事例は、東京都新宿区のホテル「UNPLAN Kagurazaka」です。浴室の天井にケイカル板を張り、塗料で仕上げています。ケイカル板のシンブルな天井とラフなモルタルの壁に、スタイリッシュなシャワーが調和するクールな空間です。

■まとめ

ケイカル板は、おもに内装に使用される不燃性の建材です。湿度に強いことから、水まわりの壁・床や直接水が掛からない軒天井などに使用することもできます。耐久性や施工性が高く比較的安価なので、リフォームの際の心強い味方になるはずです。